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マンション居住者名簿、更新を

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管理組合事務所内の鍵付き保管庫から居住者名簿を取り出し、確認する川嶋さん(左)ら=神奈川県厚木市で 拡大
管理組合事務所内の鍵付き保管庫から居住者名簿を取り出し、確認する川嶋さん(左)ら=神奈川県厚木市で

 分譲マンションの居住者名簿は、災害時の救助に役立つだけでなく、その後の復旧に向けた取り組みにも不可欠だ。だが、長く未更新のマンションも少なくないという。今月末には改正個人情報保護法が施行され、名簿もより慎重な扱いが求められる。管理組合を支援する団体は「法改正を機に住民間で話し合い、名簿の更新を考えて」と呼び掛ける。

 ●緊急対応、円滑に

 1977年に建てられた神奈川県厚木市の「鳶尾(とびお)第二住宅」(250戸)。新築時と10年後に居住者名簿を作ったが、その後は更新しないままだった。東日本大震災で建物や住民に被害はなかったが、「緊急時に居住者の安否や行方も分からないようでは、よい管理はできない」という声が高まった。2013年、26年ぶりに更新した。

 居住者全員の年齢や携帯電話番号、緊急連絡先などを記載してもらった。管理組合の細則で、使用目的を緊急時などに限定し、閲覧や保管の方法を厳密に定めた。未提出は数人にとどまったという。

 効果はすぐに表れた。約3年前。1人暮らしの高齢男性が前日分の食事に手をつけていないことを配食センターの従業員が不審に思い、管理組合に報告。管理組合が、名簿の緊急連絡先として書かれていた千葉県在住の姉に連絡して合鍵を作る同意を得た。男性は室内にいて無事だったが、管理組合の総務委員を務める間瀬豊さん(78)は「この一件を振り返っても、名簿を更新しておいてよかった」と話す。

 昨年も名簿を更新した。今後は、毎年行うという。間瀬さんは「居住者の抵抗感が薄れ、作成する側の負担も減る」と狙いを明かす。ただ、課題もある。今回新たに「介護の必要や身体障害のある方には丸印を」という一文を加えたが、ほとんど協力を得られなかった。総務委員長の川嶋庸子さん(66)は「家族にとっては最も慎重になる情報。今後は居住者への説明や記載の方法を工夫したい」と話す。

 ●復旧の際も役立つ

 マンションの管理組合に名簿を作成する法的な義務はない。ただ、管理規約のモデルとなる国土交通省の標準管理規約には「理事長は組合員名簿を作成する」と明記されている。全国のマンションの4分の1が集まる東京都も、ガイドラインで「平常時の連絡に加え、火事や地震など自然災害での迅速な対応のため」として、(1)組合員(非居住者も含めた所有者)(2)居住者(3)災害時に救護が必要になる要援護者--の名簿を備えるよう求めている。

 国の調査では、約8割の管理組合が所有者と居住者の両方の名簿を持つと回答した。だが、調査の回答率は6割強にとどまる。未回答の中には名簿を持たなかったり、長く更新していなかったりするマンションも多く含まれると推測される。

 「高齢化もあり、家族構成や緊急連絡先は常に変わる。2~3年おきに最新の名簿に更新しなければ意味がない」。全国の管理組合支援団体が加盟するNPO法人「全国マンション管理組合連合会」の川上湛永(やすひさ)会長はそう語る。災害時の救助に加え、その後の合意形成でも名簿が鍵になるという。

 昨春の熊本地震。最新の名簿があり、居住者が避難先から集まることができたマンションの場合、保険会社による損壊規模の査定に居住者が意見を言えたり、国によるサポートの受け方を話し合うのがスムーズだったりした利点があったという。川上会長は「それができずに幽霊屋敷のような状態が続く建物もある。復旧の足がかりにするためにも、名簿は重要」と強調する。

 ●厳格な管理が必要

 ただ、近年の名簿作りには壁もある。05年の個人情報保護法施行による過剰とも言える反応だ。川上会長は「プライバシー保護の意識が過剰に高まり、必要と説得しても名簿を出してくれない住民が増えてきた」と語る。今月の法改正ではマンション管理組合も初めて法の規制対象となり、より厳格な管理が求められる。川上会長は「名簿作成へのハードルは高くなるかもしれないが、管理組合の姿勢を説明して居住者の理解を得るきっかけにしてほしい」と訴えている。【安高晋】

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