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マクロン新大統領とEU 再び独仏で統合けん引を

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 フランス大統領に、エマニュエル・マクロン氏が就任した。自国社会だけでなく、欧州統合にも前進の好機となり得る。特に、統合の機関車役を果たしてきた独仏の連携が息を吹き返す可能性に期待したい。

 欧州連合(EU)の母体は、第二次世界大戦後、6カ国で発足した石炭鉄鋼共同体だ。独仏間の再度の戦争を物理的に不可能にする仕組みとして、戦略物資である鉄鋼と石炭を共同管理する機関を作った。

 統合はめざましい成功を遂げ、国家主権の象徴的存在である通貨の一本化まで成し遂げた。そのユーロ創設の立役者も、ドイツ(西独)とフランスの首脳だった。

 しかし、独仏間には、次第に経済力の差が広がっていく。フランスの失業率は今やドイツの2倍以上と高く、成長も停滞が続いている。欧州を引っ張る役目は、2頭立ての馬車からドイツ1頭立てに変わった。

 ナショナリズムの台頭など、EUを揺さぶる動きの広がりは、独仏協調による主導が弱まったことと無縁ではない。

 連携の軸を再び強化する時だ。

 マクロン氏は、ユーロ圏版「ニューディール」を提唱している。ユーロ加盟国による共通国債の発行や、共同の予算、財務相の一本化など、財政面での統合である。

 通貨を共通化し、中央銀行を一つにすれば、いずれ財政の一本化へと向かわざるを得なくなる。マクロン氏の提言は間違っていない。しかし、とてもその段階ではない、というのがドイツの見立てだ。財政統合を急げば、結局、ドイツが他国の赤字の穴埋めを強いられると懸念する。

 マクロン氏は、メルケル政権の信頼を得る上でも、まず自国経済の構造改革に本気で取り組む必要がある。一方、メルケル氏は、加盟国を財政ルールで縛り過ぎると、EU再興の貴重な機会を逃しかねない。

 ドイツも9月には総選挙があり、メルケル首相は、安易な支援と映る対応はしづらいだろう。しかし、マクロン大統領が失敗すれば、欧州が一段と分断の脅威にさらされる結果となることを忘れてはいけない。

 フランス経済の強化は、欧州統合にとっても欠かせない。独仏の首脳は、これを共通の課題と位置づけ、協力し合う必要がある。

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