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沖縄復帰45年と安倍政権 「償いの心」をかみしめて

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 「償いの心」を沖縄振興の原点に据えたのは、本土復帰の日に初代沖縄開発庁長官に就任した山中貞則・元自民党衆院議員である。

 地上戦の甚大な被害と米軍統治という沖縄の苦難の歴史を理解し、寄り添う姿勢は県民の共感を呼んだ。

 本土復帰から45年を迎えた。いま安倍政権がそうした思いを受け継いでいるだろうか。

 日本の国土面積の0・6%の沖縄県に全国の米軍専用施設面積の70・6%が集中している現状が、沖縄へのしわ寄せを物語る。本土の約400倍の負担である。

 反基地運動などを背景に米軍施設が大幅に縮小されてきた本土とは異なり、沖縄では施政権が返還された後も米軍はとどまった。その結果、全土に占める割合は返還時の6割弱からむしろ増えてしまった。

 こうした推移に政治の反応は鈍かった。復帰から首相は24人を数えるが、沖縄米軍問題に取り組んだのは復帰22年後に就任した村山富市首相になってからだ。それまで沖縄への関心といえば復興と格差だった。

 続く橋本龍太郎首相が米軍普天間飛行場返還に合意したが、21年を経てなお実現していない。沖縄との溝を埋める努力を政府が十分に果たしてこなかったことが大きな要因だ。

 とりわけ安倍政権の沖縄に対する冷淡さは際立っている。

 翁長雄志(おながたけし)知事は安全保障の重要性を共有しつつ「負担は沖縄だけで背負うのではなく、国民全体で考えるべきだ」と訴える。しかし、安倍政権はその声に耳を傾けず、沖縄との対立を法廷闘争に持ち込んだ。

 日米安全保障条約は米国の対日防衛義務と日本の米軍受け入れを定める。だが、その受益は本土が受け、負担は沖縄がかぶるいびつな構図になっているのは疑いようがない。

 沖縄の痛みを共有せずに対話より裁判での決着を目指し、法律や行政手続きに問題がなければ既定路線を突き進む安倍政権の手法に、沖縄が反発するのは当然だろう。

 20年以上にわたって沖縄が受け入れない政策を、安全保障は国の専管事項だと言って押し通すには、もはや無理がある。

 沖縄の民意に反して強行すれば禍根を残すだけだ。沖縄の声を聞く「心」が、いま大事なのではないか。

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