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華恵の本と私の物語

/10 にあんちゃん

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 「よるになるとすずしいね」

     わたしは毛布もうふから片足かたあしした。つめたい空気くうき気持きもちいい。

    「うん」

     となりのベッドにいるあに左足ひだりあしした。

    「おにいちゃんさ、あと2週間しゅうかんでアメリカにかえるんだよね」

    「うん」

    「これからもずっとアメリカにむの?」

    「どうだろうね」

    「わたしがまたアメリカにもどることもあるのかな」

    「……さぁね」

     あにはそううと、わたしの反対側はんたいがわからだけてしまった。わたしはあに背中せなかつめた。「なんで?」とくと、いつもこうなる。

     まどそと星空ほしぞらに、視線しせんうつした。ニューヨークでも、寝室しんしつまどがあり、ときにいつも夜空よぞらていた。

    「アメリカにいるときおもすね」

    「そう?」

    おもさない?」

    べつに。だってここは日本にっぽんじゃん」

     全然ぜんぜんちゃんとこたえてくれない。

    「ねぇ、もしさ、ずっとこのままはなれてらしてたとしてさ……しかもさ、もしも、だよ」

     わたしはアメリカのちちのことをいた。

    まんいちにそうになったらさ……どうなるの? わたし、そのときに連絡れんらくもらっても、わないかもしれないよね?」

     いながらどんどんかなしくなってきた。

     あには、なにこたえない。わなきゃよかったかも。でも、もうおそい。

    「ねぇ、それにさ」

     のどがヒクヒクしはじめた。

    「もしもだよ、おかあさんがんだらさ……。そのとき、おにいちゃんはすぐに日本にっほんれるの?」

     なみだがあふれた。そのときあにがやっとこたえた。

    「……大丈夫だいじょうぶだよ」

     あったかいこえ魔法まほうにかかったかのように、むねがすーっといた。

    大丈夫だいじょうぶだから。もう、なよ」

     あに言葉ことばが、とおくなる。いつのにかわたしはねむりにちていた。

      + + + +

     あのときあには10さい家族かぞくはなれてらすようになって、あにさびしさを我慢がまんしていたはずです。でも、「大丈夫だいじょうぶだよ」をえたかれは、やっぱり「おにいちゃん」なのだなとおもうのです。

     『にあんちゃん』にも、たくましいおにいちゃんがてきます。両親りょうしんくした4人兄弟にんきょうだい一番下いちばんしたすえは、生活せいかつ様子ようすをていねいに日記にっきにつづります。まずしく、べるものもすくなく、学校がっこうけるかどうかもあやうい状態じょうたいです。でも、おにいさんやおねえさんとささえあって、つよきます。

     いまから60年前ねんまえ実話じつわです。大人おとなおもうより、子供こどもって、たくましいちからをもっているのかもしれません。


    『にあんちゃん』

    安本末子やすもとすえこちょ

    角川文庫かどかわぶんこ 596えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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