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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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明治維新の政争と戦乱で京都は…

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 明治維新の政争と戦乱で京都は衰退の危機に陥る。市中は荒れ果て、公家や商人は東京に移り人口は急減した。再興のための人づくりを目的に、日本初の小学校が京都で開校したのは1869年のきょう5月21日のことだ▲学制公布に先駆けて、自治組織ごとに住民が出資し、市街地に60以上の小学校を創設した。集会所や火の見やぐらを設け、交番や保健所の機能も備えた。地域コミュニティーの拠点として夏祭りや運動会の会場にもなる▲戦後、ドーナツ化現象と少子化で子供が減り、小中学校の多くが統廃合された。特別養護老人ホームや子育て支援センターになったところもあるが、老朽化の激しい校舎の維持管理は難しく、京都市は民間による跡地活用を認めた▲第1号が日本漢字能力検定協会が運営する漢字専門の博物館だ。昨年6月、観光客でにぎわう祇園(ぎおん)の学校跡地に開館した。東山区の旧小学校は先月、京都美術工芸大のキャンパスとなった。文化庁の京都移転を見据えて伝統工芸振興の拠点を目指す▲清水寺(きよみずでら)に近い跡地には高級ホテルが開業する。東京の不動産会社の提案で、校舎の外観を残したり集会所を新設したりするほか、緊急時は避難所に使う。市民の育てた財産は姿を変えても地区の中核であり続ける▲全国では毎年500校前後の公立学校が廃校となり、地域社会の衰退で活用の決まらないケースは少なくない。その土地ならではのアイデアで「学びの場」を再生し、住民同士のつながりも取り戻したい。

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