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がん対策の基本計画 治療しながら働くために

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 がんは種類にもよるが早期治療で8~9割は治る病気となった。

 政府が近くまとめる第3期がん対策推進基本計画には、がん検診の受診率の向上とともに、患者の雇用継続への支援策が盛り込まれる。病や障害を持っていても働き続けられる社会にしなければならない。

 政府の総合的がん対策は、2006年に成立したがん対策基本法から本格化した。全国どこに住んでいても適切な治療が受けられることを目指して基本計画が策定された。この10年間でがんの治療技術は進歩し、治療体制も各地で整備されてきた。

 ただ、がん検診の受診率はまだ30~40%台にとどまる。科学的根拠が不十分な検診も散見される。日本では企業や健康保険組合が自主的に取り組む職場検診が約半数を占めているが、検診内容や受診率は十分に把握できていないのが現状だ。

 第3期計画では、国や自治体が国民に対してきめ細かい受診勧奨をする「組織型検診」の導入が盛り込まれる。欧州では広く実施されており、死亡率の減少が確認された科学的根拠に基づく検診法を広め、受診率や発見率の向上を図るという。

 患者にとっては入院や自宅療養で仕事を休まざるを得ない期間がある。治療が長引き、退職を余儀なくされる人もいる。「体力が低下した」「薬物治療による倦怠(けんたい)感や関節痛などの副作用」「会社に迷惑をかけたくない」といった理由が多い。

 女性の場合は、乳がんや子宮がんなど若い世代もかかりやすいがんが多い。出産や育児での休暇の取得とも重なって、会社内での理解が得られにくいことが懸念される。

 職場の理解の促進、きめ細かい相談支援体制の整備は不可欠だ。

 経済的な支援も必要だ。傷病手当金制度は支給開始から最長1年6カ月に限られ、その間に一時的に仕事に復帰した期間も算入される。もっと患者のニーズに合わせた柔軟な運用が必要ではないか。

 政府は長時間労働の改善などの「働き方改革」を進めている。情報通信機器を活用して時間や場所の制約を受けずに働ける「テレワーク」を推進することも課題の一つだ。

 日本人の2人に1人が、がんになる時代である。多様で柔軟な働き方を広めていかねばならない。

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