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社説

自民党の「9条加憲」論議 空文化を狙っていないか

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 自民党が憲法改正推進本部の体制を見直し、自衛隊の存在を明記する「9条加憲」へ動き始めた。年内に自民党案をまとめるという。

 私たちは、戦争放棄を定めた9条1項と戦力不保持を定めた同2項を維持したまま、自衛隊の保持を明文化するという安倍晋三首相の提起をすべて否定はしていない。

 しかし、自民党内で取りざたされる条文案を聞くと、加憲の意図に疑念を覚えざるを得ない。

 首相に近い党幹部は「9条の2」を新設する案に言及している。それが「前条の規定にかかわらず、自衛隊を設置する」「前条の規定は自衛隊の設置を妨げない」などの表現であれば、自衛隊は9条1、2項の制約を受けないとの解釈につながる。

 そうした意図を裏付けるような考え方が昨年の参院選後、右派団体「日本会議」の中から出ている。

 日本会議の有力メンバーで、首相のブレーンとされる伊藤哲夫・日本政策研究センター代表は同センターの機関誌(昨年9月号)で、9条に第3項を加えて「前項の規定は確立された国際法に基づく自衛のための実力の保持を否定するものではない」とする加憲案を提起した。

 国際法に基づく自衛権には集団的自衛権も含まれる。この案の狙いは9条の制約外しにあるのではないか。機関誌(昨年11月号)には「自衛隊を明記した第3項を加えて2項を空文化させるべきである」との主張まで掲載されている。これでは9条の堅持どころか全否定になる。

 自衛隊を合憲とする政府の憲法解釈は、自国を防衛するための武力行使を合憲とした1954年の政府統一見解で確立している。

 他国への攻撃を自国への攻撃とみなして防衛するのが集団的自衛権だ。その行使については、自衛のための必要最小限度を超えるとして、政府は長く違憲と解釈してきた。

 安倍政権は2014年にこの憲法解釈を変更し、集団的自衛権の限定的な行使を可能とする閣議決定を行った。9条加憲の狙いが集団的自衛権の制約を解くことにあるのだとすれば、9条の空文化であり、再び国論を二分するだけだ。

 自民党は条文案の検討に入る前に9条加憲の目的を明確化すべきだ。議論の順番を間違えている。

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