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サウジ・カタール断交 湾岸の団結が崩れる怖さ

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 理解に苦しむ動きである。ペルシャ湾岸で1981年から地域協力機構(湾岸協力会議=GCC)を構成してきた王制・首長制の6カ国のうち、サウジアラビアとアラブ首長国連邦、バーレーンが突然、同じGCC加盟国のカタールと断交した。

 GCCは79年のイラン革命や80年からのイラン・イラク戦争を受けて、イランの革命輸出を防ぐべく組織された。90年代からはフセイン・イラク政権の脅威にも対処した。

 そんな組織の一枚岩の団結が崩れた。地域大国のエジプトも断交に加わり、カタール包囲網が広がっている。同国のタミム首長がイランについて融和的な発言をしたほか、カタールはテロ組織を支援した疑いもある、というのが断交の理由だ。

 だが、同国はサイバー攻撃で首長発言が捏造(ねつぞう)されたと反論し、テロ支援の疑いも否定する。真相は不明だ。そうであれば6カ国はもっと話し合う必要があろう。35年以上も共存共栄を図ってきた仲間なのだ。

 サウジはカタールとの国境を閉鎖し、同国への航空機乗り入れも禁止した。秋田県ほどの広さのカタールに対する「兵糧攻め」だ。カタールの衛星テレビ局アルジャジーラの支局閉鎖も命じた。

 だが、カタールは天然ガスの一大産出国で、日本を主要な輸出相手国とする。断交が続けばカタールにいる約1000人の邦人の生活や日本企業の活動、エネルギー輸出にも有形無形の影響が予想される。世界経済への打撃も避けられない。

 しかもカタールには米軍基地があり、過激派組織「イスラム国」(IS)攻撃の一大拠点になっている。サウジは対ISでもカタールを排除する構えだが、いま必要なのはイランとの確執を越えて、幅広い対ISの共同戦線を張ることではないか。

 サウジの強硬とも映る姿勢の背景には、トランプ米大統領の意向があるとの見方も有力だ。トランプ氏は先のサウジ訪問でイランに厳しい姿勢を打ち出し、今回の断交に関してもツイッターを通じてサウジの決断への支持を表明した。

 すぐに修正したとはいえ、それも理解に苦しむ対応だった。湾岸の分断は中東の不安定化を招き、米国の利益も損なう。米大統領はむしろ対話を通じた事態収拾を急ぐべきだ。

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