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原子力機構の被ばく事故 安全管理がずさんすぎる

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 こんなにずさんな安全管理でよいのか。そうした疑問を抱かざるを得ない事態だ。

 茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターで、放射性物質が飛散し、作業員の男性5人が被ばくした事故のことだ。

 5人のうち、50代の作業員の肺からは2万2000ベクレルのプルトニウム239が検出された。

 1年間で1・2シーベルト、50年間で12シーベルトの内部被ばくが見込まれる。放射線業務従事者の年間限度0・05シーベルトを大幅に上回ることは確実で、国内では最悪の内部被ばく事故となった。

 プルトニウムは、近くの細胞を傷つける力が強いアルファ線を出す。5人には放射性物質の排出を促す薬剤が投与されているが、発がんリスクの上昇が心配される。精神面を含めた長期的ケアが不可欠だ。

 事故は、高速炉用燃料などを研究開発していた燃料研究棟で起きた。施設は廃止が決まり、26年間開封されたことがない保管容器の内部を確認する作業中だった。ビニール袋に入った放射性物質を容器から取り出そうとしたところ、袋が破裂し、放射性物質が飛散したという。

 プルトニウムの内部被ばくが健康に大きな影響を与えることは、周知の事実だ。ところが、確認作業は密閉されていない作業台の上で行われた。5人が着用していたのは全面マスクではなく、顔の下半分を覆うだけの半面マスクだった。

 トラブルに備え、密閉された作業台を使用したり、全面マスクを着用したりしていれば、内部被ばくを避けられた可能性がある。

 安全管理に細心の注意を払うという、原子力事業にとって当然の意識が欠落していたのではないか。

 原子力機構の原子力施設は老朽化が進んでおり、所有する89施設のうち44施設を廃止する計画だ。研究開発の後始末だからといって、緊張感を欠いたまま廃止措置を進めるようなことがあってはならない。

 福井県の高速増殖原型炉「もんじゅ」で多数の機器の点検漏れが発覚し、原子力機構は2年前、原子力規制委員会から運営主体の交代を勧告された。その時の失敗を、教訓として学んでいない。

 原子力機構には、事故を重く受け止め、対策に取り組む責務がある。

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