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アートの地平から

アーツ前橋館長、住友文彦さんのコラムです。

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常設展示の可能性=住友文彦

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 美術館に行くと企画展示は行列ができているのに常設展示は人もまばらなのは、メディアの宣伝に振り回される人たちが多いからなのか、見せる工夫が足りないからなのか。日本の美術館に体系立てた歴史を見せるための大きな常設展示室がないのも理由の一つではないか。国立の美術館でも、洋の東西を問わず表現の変遷とそれを支える感性がどのように現れ消えてきたかを学べる長大な歴史の展示は見られない。むしろ、常設展示は蔵出しのようにお宝を見せているような印象が強い。日本の古美術は保存上の問題で長期の展示に耐えられないものが多いのも一因である。

 名品や巨匠の作品を目利きのように紹介する展示は、思いのほか深く浸透している。これは美術史の嚆矢(こうし)と言われる16世紀イタリアのジョルジョ・ヴァザーリ由来の方法である。しかし、価値の序列を強化するのではなく、異なる見方を承認するための批評理論や作者だけでなく鑑賞者の関与を重視する心理学などの興隆によって、歴史の書かれ方は近年大きく変化している。

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