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メイ首相 誤算の英総選挙 対EUの迷走を懸念する

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 英国の総選挙で与党・保守党が過半数を割り、英下院は2010~15年以来の「ハングパーラメント」(宙づり国会)になった。解散に踏み切ったメイ首相の大誤算である。

 首相の責任を問う声も上がっている。欧州連合(EU)との離脱交渉は一層先行きが見えなくなった。

 そもそも解散前に保守党は議会の過半数を確保していた。大幅な議席増で政権基盤を固め、強い立場でEUと交渉に臨むのがメイ首相の目算だったが、逆に議席数を減らし、政権の足元は揺らいでいる。

 最大の原因は首相自身にある。

 緊縮財政のため高齢者に介護費用の負担増を求める公約を打ち出し、反発を呼ぶとすぐに変更するなど、腰の定まらない姿勢は指導者としての資質に不安を抱かせた。

 テロ事件も逆風になった可能性がある。最大野党の労働党は、メイ氏が内相時代に警察官を大幅に削減したことを攻撃材料にしたからだ。

 今回の総選挙は、今後の英国とEUとの関係を熟議する機会になるはずだった。1年前の国民投票は、離脱の意味や影響が十分議論されないままで混乱を招いたからだ。だが今回も議論は深まらなかった。

 EU側は、英国に住むEU市民の権利や、離脱に伴って英国がEUに支払う約7兆円の清算金問題などにめどがつかなければ、英国との新たな通商交渉は始めない姿勢だ。だがすべての交渉は、離脱通告から2年後の19年3月に期限切れとなる。

 今回伸長した労働党は、メイ首相の「強硬離脱」路線に反対し、欧州の単一市場にとどまる柔軟路線への変更を求めている。一方で保守党内に根強い強硬派も無視できない。

 EUとの交渉結果は英議会での承認が必要だ。政権基盤が不安定なまま交渉に臨めば、政権の方針が迷走し、EUとの合意がないまま離脱を迎える事態が懸念されている。

 そうなれば、現状では無関税の英国からEUへの自動車輸出に10%の新たな関税がかかる。金融機関などは、英国とEUで別の営業免許が必要になる。日本など外国企業にとっても深刻な問題だ。

 政権の不安定が続けば外交にも影響する。英国は国際政治の重要なプレーヤーである。一刻も早い体制の立て直しを望む。

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