SUNDAY LIBRARY

平松 洋子・評『幸田家のことば 知る知らぬの種をまく』青木奈緒・著

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷

家族の歴史をつなぐ切れば血の出る日本語

◆『幸田家のことば 知る知らぬの種をまく』青木奈緒・著(小学館/税別1500円)

 そもそも私が幸田家の言葉に強烈な印象を受けたのは、幸田文(あや)の随筆「あとみよそわか」だった。幸田露伴の次女として生まれた文が四十四歳のとき著した一編で、父から受けた躾(しつけ)について綴(つづ)るのだが、文中に登場するのが「あとみよそわか」。

 この呪文めいた奇妙な言葉は、拭き掃除を終えた娘に父が放ったもの。“いったん振り返って、自分の行いに粗相がないか気を配れ”という警句なのだが、掃除を終えて安堵(あんど)した背中に浴びせるところが、容赦ない。あるいは、文に語ったという「おまえは赤貧洗うがごときうちへ嫁にやるつもりだ」。家庭のなかで語られる愛情表現のきびしさに思わず襟を正す。

この記事は有料記事です。

残り1126文字(全文1479文字)

あわせて読みたい

注目の特集