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華恵の本と私の物語

/11 うそつき大ちゃん

 1時間目じかんめ授業中じゅぎょうちゅう。4ねんくみ教室きょうしつのドアが、ガラッといきおいよくいた。そこに佐藤君さとうくんに、クラスじゅう視線しせんあつまる。

     「おはようございます、佐藤君さとうくん

    「おはようございます」

     先生せんせいずにこたえ、あごをして大股おおまた自分じぶんせきかう。

    「どうして遅刻ちこくしたの?」

    おそくなってすいませーん」

     佐藤君さとうくんせきき、ランドセルをくるりとかえして教科書きょうかしょはじめた。おかっぱあたまかみがゆれる。

    おそくなった理由りゆういているのです」

    わなきゃだめですか」

     佐藤君さとうくんのキツネ先生せんせいをにらむ。攻撃こうげきモードだ。

     去年きょねんまでは、佐藤君さとうくんやさしくてたよりになる友達ともだちだった。みんなで「グリコ」をしているとき、みんなとわたしの距離きょりひろくなると「はなえちゃんがとおすぎるよ。いまのジャンケンは、なし! もう一回いっかい!」とってくれた。それが、今年ことしはいってわった。佐藤君さとうくん身長しんちょうたかくなり体重たいじゅうえ、キレやすくなった。男子同士だんしどうしでのけんかではめられるまでいをやめない。なんだか、近寄ちかよりにくいひとになってしまった。

    おくれた理由りゆういなさい」

     そう先生せんせいに、佐藤君さとうくんはゆっくりくちひらいた。

    「……おかあさんのかたを、もんでいました」

     男子だんしたちがした。「バレバレのうそ!」「おかあさんがおまえ遅刻ちこくさせてまでかたもみさせるわけないじゃん!」

     去年きょねんまで一緒いっしょあそんでいたたちがヤジをばす。わたしもわらった。普段ふだん佐藤君さとうくん距離きょりがあるから、こういうときにたくさんわらってしまうのかもしれない。佐藤君さとうくんかおが、みるみるあかくなっていくのがえた。

     「しずかにしなさい」

     先生せんせいがぴしゃりとった。

    「それは、本当ほんとうですか」

    「はい、そうですけど?」

     佐藤君さとうくんのどが、ごっくん、とうごいた。

     先生せんせいはゆっくり黒板こくばんなおり、なにもなかったように、授業じゅぎょうつづけた。佐藤君さとうくんは、みんなの視線しせんいたいほどかんじていたはず。でも、姿勢しせいをピンとばし、ひたすらまえていた。

      + + + +

     『うそつきだいちゃん』をんで、このことをおもしました。よごれたかわさかながいたことや、巨大きょだいなネズミをたことをってもしんじてもらえず、「うそつき」とわらわれるだいちゃん。でも、ある健太けんたすべ本当ほんとうだったとります。だいちゃんの気持きもちもり、健太自身けんたじしんわっていきます。

     このほんんで、はじめておもいました。佐藤君さとうくん、みんなにうそつきとめつけられ、どんな気持きもちだったのだろう、と。そとからてわかることなんて、ほんとうにわずかなのでしょうね。


    『うそつきだいちゃん』

    阿部夏丸あべなつまるちょ 村上豊むらかみゆたか・イラスト

    ポプラしゃ

    現在げんざい販売はんばいしていません)


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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