連載

社説

社説は日々、論説委員が議論を交わして練り上げます。出来事のふり返りにも活用してください。

連載一覧

社説

異次元緩和からの出口 米国に続き日銀も語れ

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷

 米国の中央銀行が、金融危機対応型の政策を平常時用に正常化するための最終行程を示した。早ければ9月に着手する。

 2008年のリーマン・ショック後、連邦準備制度理事会(FRB)は、日銀同様、国債などの債券を大量に購入する量的緩和を実施した。すでに量を追加する政策は終え、利上げも4回行ったが、資産を圧縮する最終段階には至っていなかった。

 金融危機前の約5倍に膨張した国債などの資産を、市場の混乱を回避しながら、粛々と縮小していけるかどうか、予断を許さない。FRBは年3回ペースで利上げも継続する構えだ。国内外の景気に与える影響を注意深く点検していく必要がある。

 とはいえ、正常化の行程をあらかじめわかりやすく説明しようとする姿勢は評価したい。市場参加者に、政策の見通しを提示することは、混乱回避に役立つばかりか、政策の効果を発揮する上でも重要だ。

 対照的といえるのが黒田東彦総裁下の日銀である。経済規模は米国よりはるかに小さい日本の中央銀行が抱え込んだ資産は、米国とほぼ並ぶ。

 正常化に向けて緩和のギアを落とそうとした時、市場がどう反応するか計り知れない。それだけに、前もって出口戦略の基本的な方針を説明しておく必要があるのではないか。

 黒田総裁は16日の記者会見でも、「現時点で具体的なシナリオを示せばかえって混乱を招き、適切ではない」と繰り返した。

 確かに、物価上昇率の現状は2%の目標に程遠い。だが、「出口に近づいてから」(黒田総裁)説明を始めるのでは、今後何年を要するかわからない。また、先になるほど、公表時の衝撃は大きくなりそうだ。

 米国でさえ、最初に出口戦略の原則を示してから6年となる。当時の方針通りにいかなかった面もあるし、市場の動揺を招いたこともあった。しかし、そうした試行錯誤を経て、ようやく今、異次元緩和を手じまう最終段階に立てたのだ。

 金融政策の正常化で日銀が経験する試練は米国の比ではなかろう。金融界からは、将来の動揺を防ぐためにも、政策の予見可能性を高めてほしいとの要望が聞かれる。語ろうとしない姿勢こそが不安を招いていることを、日銀は十分理解すべきだ。

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集