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沖縄漁船、隠された被ばく

調査団の質問に答える上里清幸さん=沖縄県糸満市で2017年5月14日、岩間理紀撮影

米統治下、救済されず…市民団体が初調査

 1950年代を中心に、米国が太平洋・ビキニ環礁付近で実施した原水爆実験は計67回に及ぶ。国内では54年3月1日に静岡県のマグロ漁船「第五福竜丸」が被ばくした事件が知られるが、当時周辺では他にも多くの漁船が操業中だった。60年以上を経て真相が少しずつ明らかになっているが、当時米軍統治下の沖縄は、日本政府による放射線検査や被害補償の対象外で、実態は依然不明のままだ。「福竜丸以外」の被ばく実態解明に取り組む市民団体「太平洋核被災支援センター」(高知県宿毛市)が、琉球大の研究者らと初めて調査に入り、記者も同行した。【岩間理紀】

     梅雨入り翌日の5月14日、沖縄県糸満市の住宅街を、山下正寿・同支援センター事務局長(72)らの調査団が歩いていた。向かったのは、マグロ漁船「銀嶺丸」の元船員、上里清幸さん(87)宅だ。銀嶺丸は54年、フィリピン近海のセレベス海で操業。ビキニ環礁とは離れているが、「死の灰」は広範囲に降り、海も汚染された。沖縄へ帰港直後に米軍に放射線検査をされたが、結果は知らされず、検査記録も確認されていない。

    十数隻被災か

     当時の科学者の分析によると、水爆「ブラボー」を皮切りに米国が54年3~5月に実施した実験では、爆心地の東約160キロの公海にいた第五福竜丸の乗組員23人全員が、1.6~7.1シーベルトの高線量を浴び「急性放射能症」と診断された。政府は全国18港で、漁船の放射線検査を実施。汚染された計485トン以上の魚が廃棄されたとされる。銀嶺丸に廃棄命令は出なかったが、上里さんは「マグロがその後、廃棄されたといううわさが流れた」と話した。

     自身も大腸がんなどを発症した上里さんは「(真相を)解明してほしい。(米軍統治下で当時の)琉球政府が強く出られなかったことが問題だ」と憤る。当時の琉球気象台のまとめによると、実験地に近い沖縄では、60年代初めまで最高で毎分17万カウントの「放射能雨」が降り続いたとされる。

     「マグロパニック」が拡大し、米政府は55年1月、200万ドル(当時約7億2000万円)の「見舞金」を日本政府に支払うことで政治決着。放射線検査も打ち切られたが、水爆実験はそれ以後も続いた。

     一方で、米軍統治下の沖縄は見舞金の対象外とされた。2014年9月に国が開示した延べ556隻分の放射線検査記録のリストには、高知や宮城など各地の船名が確認されたが、沖縄の船名はなかった。米軍政下の沖縄は、日本国内の保険制度に入ることができず、大半の市民が無保険。船員保険もなく、記録からの追跡も難しい。

     沖縄県平和委員会の調査では、銀嶺丸のほかに十数隻が被災したとみられ、80年代末時点で、多くの船員ががんなどで亡くなった。

    迫る「時効」成立

     昨年5月、高知県などの元船員や遺族ら45人が「国が故意に被災事実を隠した」として国家賠償を求めて高知地裁に提訴し、他に三重などでも被災船員の追跡調査が進む。今年9月には損害賠償請求権の時効(3年)が成立する可能性がある。調査団は、被ばくした可能性がある沖縄の元船員らを探し出すとともに、日本または米政府を相手にした国賠訴訟を視野に入れる。山下事務局長は「ビキニ被ばくの解明と元船員らの救済につなげる最後の機会。沖縄の問題が一番深刻だ」としている。

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