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武田 砂鉄・評『箸もてば』石田千・著

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ふと思い浮かぶのは「あの人」と過ごした時間

◆『箸もてば』石田千・著(新講社/税別1700円)

 観光地に出かけても平然とチェーン店で食事を済ませる自分に向かう視線は厳しく、時に人格否定を多分に含んだ失望を向けられる。「何を食べるかじゃなく、誰と食べるかだと思う」という、どこかで何度も聞いた台詞(せりふ)を借りてみるものの、冷たい目は一向に変わりそうにない。

 それなのに、石田千さんのエッセーをいつも手に取る。そこには食事の風景が豊かに盛り込まれていて、目の前に広がる食の活写を頭で再現する知識すらないくせに、繰り返し読む。今回のエッセー集も、オビ文に「めし、おさけ。」とだけあるように、箸を動かしながら考えた思索と対話の集積。迷い続けたり、ついに決めたり、やっぱりやめたりする。その思考の導線が、湯気に包まれるように、あやふやな状態を許容する。

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