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アニメ

「バングラデシュのジブリに」日本人がスタジオ

映像編集の方法を教え合う「スタジオパドマ」のスタッフ=水谷俊亮さん提供

 バングラデシュの首都ダッカに、奈良県香芝市出身の水谷俊亮さん(32)が設立したアニメスタジオがある。現在は、日本からの下請け作業や、教材製作、動画編集の仕事をこなしながら、バングラデシュを舞台にしたアニメ映画の製作を目指している。現地で作られた母国語のアニメがないバングラデシュで、「スタジオジブリ」のような存在を目指す。【中嶋真希】

 月夜を歩くトラ、伝統工芸の絵柄でよく使われる田舎の風景、人であふれる都会で働く男性の物語ーー。「スタジオパドマ」が製作する短編アニメは、バングラデシュの華やかな民族衣装を思わせる色遣いで、豊かな自然、にぎやかな街が描かれる。ダッカの下町にある水谷さんの自宅を兼ねたスタジオでは、現地の20代6人がともに働き、技術を磨いている。

 日ごろの業務は、アニメの下請け作業や、映像教材の製作などが中心。結婚式で流す映像の編集なども受注している。スタッフの中には美術を習ったことがない人もいるが、映像ソフトを使って特訓の日々だ。水谷さんは、「興味さえあれば、ある程度の仕事はできるようになる」と、スタッフの指導に力を入れる。いずれバングラデシュを舞台にしたアニメ映画を製作するのが目標だ。

「ここに住みたい」と思った

 水谷さんがスタジオを設立したのは、2014年5月。大学院修了後、フリーランスで映像編集の仕事をしていたが、学生時代に訪れて魅了されたバングラデシュに移住した。

日本に一時帰国中、インタビューに答える水谷俊亮さん=中嶋真希撮影

 初めてバングラデシュを訪れたのは07年。貧困や支援活動について学ぶスタディーツアー。初めての海外旅行だったが、「世話好きな人たちにひかれた。すぐに『ここに住みたい』と思った」と振り返る。大学院に進学し、09年8月からストリートチルドレンを支援する現地NGO「エクマットラ」で1年間インターンを経験。得意のグラフィックデザインを子供たちに教える中で、「アニメってどうやって作るの?」と聞かれたことが印象に残った。アニメなら、自分のグラフィックの技術と、子供のころから好きで続けていた作曲が生かされる。大好きで何度も見たスタジオジブリのような作品が、バングラデシュで作れたら--。その思いで、スタジオ設立を決めた。

ヒンズー語の「ドラえもん」が社会問題に

 バングラデシュでは、日本のアニメが人気だ。インドで05年に始まったヒンディー語吹き替えの「ドラえもん」がバングラデシュでも放送されるようになり、空前の大ヒットになった。

 バングラデシュのテレビでは、インドの番組がそのまま放送されることが多い。ドラえもんもベンガル語ではなくヒンディー語の吹き替えで放送された。その人気は絶大で、子供たちはヒンディー語を交えて会話するようにもなった。母国語の学習に悪影響だという理由で、バングラデシュ政府は13年にドラえもんの放送を禁止した。

 日本のアニメへの関心は高い一方で、新たな作品を自国で作ることのハードルになっている面もあるという。「日本の古いアニメを放送するほうが、コストもかからず、人気も出る。新作を製作するための予算を獲得するのは難しい」と水谷さんは指摘する。

 だからこそ、現地でアニメを作ることにこだわる。「日本人にとって、ふるさとの風景がアニメに出てくるのは当たり前かもしれない。バングラデシュでは外国の風景のアニメしかないので、画面にリキシャー(三輪タクシー)が出てくるだけで子供たちは大喜びする。『バングラデシュのヒーローが必要。がんばってほしい』と周囲から言われ、期待されていると感じる」と話す。

テロの悪夢……アニメでイメージ挽回を

デッサンの練習に励む「スタジオパドマ」のスタッフ=水谷俊亮さん提供

 ダッカでは16年7月、テロで日本人7人を含む20人が犠牲になった。1年たって日常は戻ってきたが、今も厳戒態勢は続いている。そんな中、水谷さんは、アニメ作りが国のイメージを挽回するチャンスになると期待している。「アニメ製作は、一つのスタジオでできるものではない。ほかのスタジオとも連携し、スタッフを増やし、産業にできたら。『みんなで一緒にやろう』がバングラデシュ流だから」と、力強く語った。

中嶋真希

2006年毎日新聞社入社。静岡支局、毎日小学生新聞などを経て15年10月からデジタルメディア局。東日本大震災の影響で統廃合した宮城県石巻市の小学校や、性的少数者、障害者の社会進出などについて取材を続けている。共著書に「震災以降 終わらない3・11-3年目の報告」(三一書房)がある。

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