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日本と欧州連合(EU)が経済連携協定(EPA)を巡って大詰めの交渉を行っている。来月上旬にも首脳会談を開き、大枠で合意することを目指している。
実現すれば、経済規模で世界の3割近くを占める巨大な自由貿易圏が誕生する。トランプ米政権が保護主義政策を強める中、日欧が自由貿易推進で手を結ぶ意義は大きい。
対立点は残っているが、大局的な観点から歩み寄ってほしい。
日欧EPAは、投資や電子商取引を円滑化するルールも定めるなど幅広い分野に及ぶ。交渉は4年前に始まり、多くが最終段階にある。
隔たりがあるのは関税だ。フランスなどの農業大国を抱えるEUはチーズやワイン、豚肉などの農産品、日本は自動車や家電で撤廃を求め、調整がついていない。
自由貿易を通じて、日本はさまざまな経済効果が見込める。人口減少で国内市場が縮小しており、自動車などの輸出を増やす好機となる。
EUは既に日本と競合する韓国と自由貿易協定を結び、韓国車の輸入関税を撤廃している。劣勢にある日本企業の競争力回復は急務だ。
また、日本が欧州産農産品の関税を撤廃すれば、輸入品の価格が下がり、消費者にもプラスだ。
農家の経営を圧迫する恐れがあり、自民党農林族は関税維持を主張する。だが、市場開放で得られる国全体の利益はより大きいはずだ。政府は農業の足腰を強める政策を示し、農家の懸念を払拭(ふっしょく)すべきだ。
保護主義けん制の意味も持つ。
日米などが自由貿易圏の形成を図った環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は、米国の離脱で暗礁に乗り上げた。英国もEU離脱に向けた交渉に入った。保護主義は貿易を停滞させ、世界経済に逆風となる。
EUの日本向け農産品輸出が拡大すると、米農産品の対日輸出に不利に働く。米農業界などでTPP復帰論が出てくる可能性もある。EUも対日輸出が増えれば、加盟国のEU離れを防ぐ効果が期待できる。
今回、合意を逃すと、EUは本格化する英国との交渉に力を割かれ、日本との協議が停滞する恐れがある。「自由貿易の旗を掲げ続ける」と強調してきた安倍晋三首相は合意へ指導力を発揮すべきだ。
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