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社説

大崎事件で再審開始決定 すみやかに名誉の回復を

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 2度目の再審開始決定である。検察は真摯(しんし)に受け止めるべきだ。

 鹿児島県大崎町で38年前、男性が殺害されたとされる「大崎事件」で、殺人罪で懲役10年が確定し、服役した90歳の原口アヤ子さんについて、鹿児島地裁が裁判のやり直しを決めた。証拠は脆弱(ぜいじゃく)で、原口さんの再審開始決定は当然だ。

 決定は新証拠に基づく鑑定を踏まえ、「殺害行為はなかった疑いを否定できない」とし、共犯者とされる元夫(故人)の再審開始も認めた。

 被害者は原口さんの義弟だ。自転車事故を起こし、意識のないまま自宅に運び込まれた後、牛小屋の堆肥(たいひ)の中から遺体が見つかった。警察は首を絞められた窒息死とみて、被害者の長兄である原口さんの当時の夫と、被害者の次兄を逮捕した。

 2人の自白により、殺人を指示したとされる原口さんと別の親族も逮捕された。原口さん以外は公判で事実を争わず1審で判決は確定した。

 一方、原口さんは取り調べでも公判でも一貫して犯行を否認した。

 共犯者とされる3人は知的障害があった。決定は、3人の自白について捜査機関の誘導の可能性を指摘した。客観的な証拠がほとんどない中で、警察が描いたストーリーに迎合させられたのではないか。

 過去の冤罪(えんざい)事件と同じ構図だ。自白に偏重した捜査への警鐘と受け止めなければならない。

 確定判決を覆したのは、再審請求の途中で検察側が新たに開示したネガフィルムの写真だ。写真によって、死斑など窒息死の所見が見られないとする鑑定書がまとまった。弁護側は自転車事故によるショック死の可能性を主張した。

 一連の経緯からは、司法の怠慢が見える。検察がネガフィルムなど200点以上の証拠を開示したのは事件後30年以上たってからだ。

 裁判所の対応も問われる。第3次の再審請求に至るまでの間、弁護団は裁判所に対し、検察官に証拠を開示させるよう再三求めたが、応じずに審理を終結し、請求を棄却したこともあった。

 原口さんは高齢だ。速やかに名誉の回復を図らねばならない。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則に立てば、検察は即時抗告せず、再審裁判に応じるべきだ。

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