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くらしナビ・気象・防災

災害への備え…認知症は

地域住民や福祉関係者が意見を出し合ったワークショップ=三重県紀北町で昨年7月(中部電力提供)

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 東日本大震災や熊本地震では、長引く避難生活で多くの認知症患者の症状が悪化し、避難所運営の難しさも浮かび上がった。2025年には患者数が700万人に達すると推計され、対策の強化が急がれる。地域でどういった備えが必要なのか、三重県紀北町での取り組みを取材した。

 ●環境変化で悪化も

 地域には認知症と診断されていないものの、要介護状態になるリスクが高い「予備軍」とされる人たちがいる。住み慣れた家や環境ではほとんど不便を感じずに生活しているが、いざ災害で環境が変化すると適応できず、発症したり、急激に症状が悪化したりすることが多い。三重大学の平松万由子准教授(老年看護学)は「予備軍の人たちへの対応が大きな課題」と指摘する。災害が起こるまでケアの対象とされていないため、支援につながりにくいからだ。

 熊本地震では、熊本県の認知症コールセンターに、発災後1カ月半で震災に関係する相談が81件寄せられ、うち約8割が「家族の症状が悪化した」という内容だった。運営する「認知症の人と家族の会」熊本県支部によると、それまでほとんど認知症の症状のなかった1人暮らしの高齢者が、別居する家族を捜して歩き回ったり、1人で夜を過ごせなくなったりした例もあったという。

 平松准教授ら三重大のグループは昨年、中部電力、自治体との産学官連携事業として、紀北町の一部で認知症など配慮が必要な人に特化したマニュアル作成など、防災対策の支援を始めた。同町は南海トラフを震源とする巨大地震で、最大震度7、最大19メートルの津波が想定されている。今年5月現在の高齢化率は41・8%で高齢世帯が多い。

 ●地域ぐるみで支援

 「要配慮者」とされる75歳以上の夫婦や1人暮らし住民、障がいのある人などを対象に、厚生労働省のチェックリストを使ったスクリーニング検査を実施した。すると対象地区では、発症リスクの高い予備軍が約半数に上ることがわかった。こうしたデータを踏まえて、自治会や民生委員、自主防災組織、福祉関係者など、地区の防災の柱となる人たちが4回にわたってワークショップを開催。自分たちの地域の課題を洗い出し、国や県のものとは異なる独自の要配慮者支援マニュアルを作成した。

 ワークショップでは認知症に関して知識が十分でない人もいたが、専門家の講義を受け、災害の際に生じやすい問題について理解を深めた。その結果▽認知症の人は知らない人や場所に不安を覚えるため日ごろからあいさつ、声かけ、世間話をしてなじみの関係になる▽非常持ち出し品の準備を一緒に行う▽話すときは焦らずペースを落とし少しずつ伝える▽介護する人を支援する体制づくりを行う--など、参加者の「気づき」がマニュアルに反映された。

 その後行われた防災訓練では、マニュアルに基づき、近所で積極的に声をかけあうなど要配慮者との関係づくりが意識された。地区の自治会長、岡村哲雄さん(67)は「認知症の人の対応方法など初めて知ることがたくさんあった。個人情報の扱いの問題もあるが、いかに配慮が必要な人の状況を把握して支援につなげるか地域で考えていきたい」と話す。

 平松准教授は「災害が起こると自分の身を守るのに精いっぱいで、他人、ことさら認知症の人への対応は難しい。日ごろから病気への理解を深め、顔なじみになるようコミュニケーションを取り合うことが備えになる」と話す。今後は他の地区にも事業を広げていく方針だ。【太田敦子】


認知症高齢者への工夫や配慮

(1)理解を地域で深める

 ・日ごろからあいさつ、声かけ、世間話をして、なじみの関係となる

 ・当事者や家族が支援を求められる雰囲気づくりをする

(2)非常持ち出し品の準備を一緒に行う

(3)避難経路に慣れておく

(4)避難所生活においては専門のスタッフの支援を得る

(5)避難所では個室や専用スペースを確保し、わかりやすい表示を工夫する

 ・家族やなじみの人と共に過ごせる場所を確保

(6)関わり方の工夫をする

 ・ゆったりと少しずつ話す

 ・あわてずに本人にそった対応が大切

(7)介護する人を支援する体制づくりを行う

(住民らで作成した災害時要配慮者支援マニュアルから)

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