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「私の故郷は、歯舞(はぼまい)群島の志発(しぼつ)島です……枯れ草の合間からネコノメソウの小さな黄色い花が顔を出すと島は春です。これを機に秋まで可憐(かれん)な花が次々に咲く、自慢の故郷です。今は自由に行くことができません」▲今年2月7日に開かれた「北方領土返還要求全国大会」のパンフレットにある「ふるさとへの道」から引用した。北海道在住の女性が昨夏、「自由訪問」という日露間の特別な枠組みで故郷を訪れた時の思いを聞き書きしたものだという▲第二次世界大戦後、ソ連(現ロシア)に占領された北方領土(歯舞群島、色丹(しこたん)島、国後(くなしり)島、択捉(えとろふ)島)には約1万7000人の日本人が暮らしていた。北海道への強制送還が始まったのは70年前の7月4日。翌年10月まで計7回にわたる送還はサハリン経由で、途中病気などで命を落とした人も多かった▲「ふるさとへの道」にはこんな一節もある。「幼き日、私を背負い母が歩いた草原を今は息子に背負われている。一度で良いから息子を背負って歩きたかった--」。故郷を追われてから70年。その悔しさは当事者にしかわからない▲「いずれは島に帰る」と信じ続けた元島民の多くは他界し、残る約6300人の平均年齢は81歳を超えた。だが、いまだに領土返還のめどは立たない▲共同経済活動という日露の新たな試みは打開策になるのか。その可能性を探るための日本の調査団が初めての北方領土視察をきのう終えた。涙で故郷に別れを告げた元島民らは、一筋の望みを託している。
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