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農産物の国際認証 東京五輪を取得の転機に

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 2020年東京五輪・パラリンピックの会場や選手村で、国産の農産物の食材を十分に提供できなくなることが心配されている。

 12年ロンドン五輪以降、提供する食材は国際的な安全証明が求められるようになった。だが、日本の対応は遅れており、国産調達のめどがついていないためだ。

 牛海綿状脳症(BSE)問題などを経験した欧州には食品安全の基準を示した農業生産工程管理(GAP)という認証制度がある。

 農産物の生産過程が適切かどうかを安全、環境、従事者の人権の三つの観点から、第三者が審査する。制度は世界に広まり、国際水準の認証は難易度が高い。

 日本では国内消費に重きを置いてきたため、取得農場は420カ所に過ぎず、農家の1%にも満たない。

 ロンドン五輪では英国農家の8割以上が認証を取得しており、日本は遅れている。東京五輪では1500万食分が提供される見通しで日本の食文化を発信する好機だ。

 東京五輪の大会組織委員会は調達する食材について、認証の取得を原則とした。だが、審査項目のより少ない独自認証も認めたため「国際的な信用を得られない」との批判も出ている。政府は審査料の補助や指導員の増員を始めた。農産物の品質の底上げにもつながるのだから、取り組みを急ぐべきだ。

 五輪では障害者が生産に関わった食材や有機農業による食材も優先的に使われる。食を通じて人権や環境重視の姿勢を示すことも重要だ。

 世界の食市場は20年には680兆円と大幅に成長する。国際競争力の強化が大きな課題となる。

 認証制度を運営する日本の財団法人は独自に高い水準の認証を策定した。総売上高が300兆円に上り、70カ国の食品・小売り大手400社で構成する業界団体は食材調達の際、国際水準の認証を求めている。

 日本の取り組みへの理解を得ていくことが、アジアなどに農産物の販路を拡大するためにも必要だろう。 農産物の生産地は少子高齢化に直面する地域も少なくない。人材育成や情報通信技術(ICT)の利用による生産性向上など長期の支援も欠かせない。五輪までの場当たり対応で終わらせてはならない。

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