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武田 砂鉄・評『母ではなくて、親になる』山崎ナオコーラ・著

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育児経験の有無では文章の読みは変わらない

◆『母ではなくて、親になる』山崎ナオコーラ・著(河出書房新社/税別1400円)

 自分の経験にすぎないのに、それをいつの間にか「社会は」「大人は」「女は」といった大きな主語に膨らませていく言説を信用してはいけない。その話法を特権的に使う物書きはまだまだ多い。特権は、とりわけ年齢や育児の話題に集中しやすい。「自分が○歳の頃には……」や「子どもを育てると分かるけど……」などと、経験を社会全体に強いようとする。

 山崎ナオコーラの出産・子育てエッセイは、自分の経験を他者に強いない。「今、私は育児エッセイを書いているが、読者の育児経験の有無によって、文章の読みが変わるということはない」と書く。この姿勢に尽きる。「同じ女性として」「同じ親として」といった同調から正解を探し、不正解の数を極力少なくしようと心がけるからこそ、子育てが窮屈になっていく。

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