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村上陽一郎・評 『『医心方』事始 日本最古の医学全書』=槇佐知子・著

 (藤原書店・4968円)

膨大で難解な原著翻訳に生涯懸け

 ある程度の年配の方の中には、『医心方(いしんほう)』と聞くとニヤリとなさる方があるらしい。房事(ぼうじ)について、事細かに書かれた書物という思い込みからだろう(比較的最近でも、巻二十八<房内篇>だけを翻訳した書物が刊行され、ネットで高値で売られている)。しかし、原著は、一〇世紀に生きた丹波康頼(やすより)という医家が、編纂(へんさん)して朝廷に献上した、日本で最古の、浩瀚(こうかん)な医療の大著である。現在に伝わるものは、朝廷から民間に下げ渡されて、時間を経過し、今は国立博物館所蔵となり、国宝に指定されている。編著者の康頼は、一説によれば後漢の霊帝にまで遡(さかのぼ)り得る渡来人の末とあり、漢籍を縦横無尽に読みこなし、それらを医療という観点からまとめ上げた。したがって、由来するところは、中国にとどまらず、インド、ペルシャなど極めて広範囲に及び、それ自体が古代から中世の世界の文化交流の有様(ありさま)を示すと同時に、内容も、狭い意味での医療を遙(はる)かに超えて、人間の生き方、死に方など無辺の広がりを見せている。

 それだけに、使われている漢字や術語だけでも、恐ろしく難解なものも多く(本書の著者に言わせると、一つ…

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