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SUNDAY LIBRARY

岡崎 武志・評『最愛の子ども』『女の子が生きていくときに、覚えていて……』ほか

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今週の新刊

◆『最愛の子ども』松浦理英子・著(文藝春秋/税別1700円)

 『奇貨』から5年、松浦理英子が放つ新作長編『最愛の子ども』は、神奈川県下の男女共学の私立高校が舞台。ただし、男女のクラスは別で、互いに仲が悪く、並の学園ドラマではない。

 2年4組の仲良し3人組の真汐、日夏、空穂。彼女らは空想の学内ファミリーを作り、それぞれママ、パパ、王子という役割を担う。現実の家族より「ほんもの」に思えてくるのだった。そう書けば、突拍子もない小説みたいだが、ここに描かれた少女たちの内実は、きわめてリアルだ。

 「わたしたち」という主語で、この年齢の女子が抱える心の翳(かげ)りや葛藤が露(あら)わにされる時、何も考えずケラケラ笑っているだけに見えて、女子高校生たちの神経は、そよぎ、揺らいでいると知るのだ。

 疑似ファミリーの均衡が崩れる時、互いに牽制(けんせい)し合う3人の「孤独」が見えてくる。流行のジェンダー論や物語の神話性によりかからず、女性の「性愛」を表現し尽くして、ただただ見事だ。

◆『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』西原理恵子・著(角川書店/税別1100円)

 『毎日かあさん』の西原理恵子も、娘が反抗期を迎え、船出の時が来た。『女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』は、わが体験に照らし合わせ、娘に伝えたいことを記す。

 16歳の娘は、新しい夢を持ち、母親の後ろ姿しか見なくなっている。「おかあさんは、何もわかってない!」。ときとして身勝手な態度を前に、爆発しそうになった時の「5分間ルール」は、別の部屋でクールダウンせよ。

 高知の田舎から上京して、いきなり最下位から始まった「絵」の仕事。著者は、そこで初めて自分の立ち位置を知る。だから「要らんプライドをへしおられて、目が覚めてからが本当のはじまり」と、人生航路初心者の娘に、心優しき処方箋を書くのだ。

 寂しさゆえに男を切れなかった昔。「いつまでも男捨離しないでいると、人生が汚部屋になりますよ!」。体験済みの助言はつねに名言となる。こんなお母さんを持てて、娘さんは幸せだ。

◆『白骨』M・ヨート&H・ローセンフェルト/著(創元推理文庫/上下各税別1040円)

 脚本家M・ヨート&H・ローセンフェルトによる人気シリーズ。『白骨』(ヘレンハルメ美穂訳)は、山中で見つかった六人の白骨遺体が発端。国家警察の殺人捜査特別班が動き出すが、難事件のため要請したのが犯罪心理捜査官のセバスチャン。腕利きだが、女癖が悪く、方々でトラブルを起こす。現在、ストーカーの女性と同居中という内憂外患ぶり。一方、移民男性の失踪事件を追いかけるテレビ取材班がからみ、あちこちでトラブルが勃発する。キャラクターが濃い、異色北欧小説の第3弾。

◆『鶴八鶴次郎』川口松太郎・著(光文社時代小説文庫/税別680円)

 成瀬巳喜男監督、山田五十鈴と長谷川一夫の名演が忘れがたい映画『鶴八鶴次郎』。その原作者が川口松太郎。同作は第1回直木賞受賞作だ。太夫の鶴次郎、女三味線弾きの鶴八。人気新内(しんない)語りの二人は、芸道への精進に身も心も捧(ささ)げるがゆえに、衝突が絶えない。夫婦となる約束をし、念願だった寄席まで持つが、再び大げんかし、別々の身に。ほか「風流深川唄」「明治一代女」と、著者畢生(ひっせい)の世話物三作を収めた。芸道と男女の情愛と哀れを描いて、ほとんど無類の巧(うま)さをご堪能あれ。

◆『みんなの朝ドラ』木俣冬・著(講談社現代新書/税別840円)

  坪内祐二という登場人物まで現れ、ますます快調で目が離せない「ひよっこ」。木俣冬『みんなの朝ドラ』は、「おしん」「ちゅらさん」「ゲゲゲの女房」「あまちゃん」「とと姉ちゃん」など、朝恒例のNHK「連続テレビ小説」の系譜をたどり、その人気の秘密を分析する。一時低調だった朝ドラに新しい風が吹いたのは、いつから? ツイッターなどSNSの拡散効果がドラマを変えた。時代の変化を読みつつ視聴者心理に寄り添うなど、調べは行き届き、読みも深い研究書だ。

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岡崎武志(おかざき・たけし)

 1957年、大阪府生まれ。高校教師、雑誌編集者を経てライターに。書評を中心に執筆。主な著書に『上京する文學』『読書の腕前』『気がついたらいつも本ばかり読んでいた』など

<サンデー毎日 2017年7月23日号より>

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