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著者インタビュー 末井昭 『結婚』

何度衝突を繰り返してもやっぱり結婚は、いい

◆『結婚』末井昭・著(平凡社/税別1400円)

 同棲(どうせい)と結婚、合わせて29年連れ添った妻の元を飛び出して、新たな女性との恋愛と結婚。1980年代、雑誌『写真時代』の編集長としてエロをカルチャーに押し上げた“伝説の編集者”が、自らの結婚生活を表現者として振り返ったのが本書だ。

「彼女(現在の妻・写真家の神藏美子さん)が、僕のどこに惹(ひ)かれたかって? 『オレのどこがいい!?』なんて聞いたことないからなあ(笑)。ただ、僕とつき合うと『自分自身が広がる、面白くなれると思った』とは言ってました。神藏美子として、写真作品を世に問おうっていう時期だったから、いろいろ迷っていたんでしょう。その中で女装写真というテーマを見つけた。僕もその被写体になったのが出会いなんですが、一般の女装者じゃなくて有名人に女装させるというのは、二人で考えたんです。そんなこともあって、何か触発されるものを感じたのかもしれませんね」

 その頃、神藏さんは評論家の坪内祐三さんと暮らしていた。

「最初は、僕のことはセックスだけが目当てかと思ったんです。『坪内さんとは特別な関係だから』って言われた時、“特別”ってどういうことかって考えたら、愛し合ってるってことでしょう。じゃあ僕との関係は、肉体的な関係だけなのか……って」

 神藏さんは末井さんとの同棲中も、たびたび坪内さん宅を訪れ、時には泊まることもあった。

「でも嫉妬はなかったですね。坪内さん、えらいな、とは思いましたけど。ある期間は、一緒にお酒飲んだりして。他人でもないような身内でもないような……不思議な存在でしたね」

 神藏さんが奔放な表現者である一方、末井さん自身も文筆や編集で自己を表現する。二つの強烈な自意識は、衝突を繰り返した。そんな中、「イエスの方舟」の千石剛賢(たけよし)さんの解釈による、聖書への共通認識が2人を引き寄せたという。

「『人が人を愛するというのは、どういうことなのか?』、千石さんの説く聖書の根本は、そこなんだと思います。男女の場合だと『男が女を受容する』……良いところも悪いところも、すべて取り込んじゃうということですね。僕は彼女を、まだ完全には受容できてないけど、だんだんパラダイスに近づいている気はしますね。どんどん楽しくなってる。一緒に暮らし始めた頃は、なかなかそんな気分になれなかったけど」

 最初の結婚から、現在の結婚で平穏を得るまでの道のりは、読者の目には相当に険しく映るだろう。

「それでも僕は結婚を勧めますね。楽しいから。たしかに、ここに至るまでは結構たいへんですよ。でも最初に期待のハードルを低く設定しておけば大丈夫。だんだん上げていけばいいんです」

 そのスタートに期限はあるのだろうか?

「僕は50歳直前に神藏と出会った。だから新しいスタートは、いつでも切れると思います。要はどこまで真剣になれるかですよ。打算的なことは考えないで、どこまで相手と向かい合えるか。そんな面倒なことは嫌だと思うのは老化の証拠です」

(構成・小出和明)

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末井昭(すえい・あきら)

 1948年、岡山県生まれ。工員、キャバレーの看板描き等を経てセルフ出版(現・白夜書房)設立に参加。『写真時代』などの雑誌を創刊。『素敵なダイナマイトスキャンダル』他著書多数

<サンデー毎日 2017年7月23日号より>

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