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くらしナビ・気象・防災

ジャガイモ、台風に負けるな

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 昨夏に台風が相次いで北海道を襲い、収穫直前のジャガイモが大打撃を受けた。北海道は国内のジャガイモ生産の8割を占める一大産地。被害で北海道の昨年の春植えジャガイモ収穫量は前年より1割減り、ポテトチップスが一部販売休止に追い込まれる「ポテチショック」が全国に広がった。植え付けから3~4カ月で収穫でき調理も簡単なことから世界中で生産されるジャガイモ。安定供給に必要な対策を探った。

 ●「ポテチショック」

 昨年は日本列島に計六つの台風が上陸し、気象庁の統計開始以来2番目に多い年となった。北海道には8月中旬から下旬にかけて、観測史上初めて三つの台風が上陸。十勝地域などで河川が氾濫し、農作物が流出したり畑に土砂が堆積(たいせき)したりするなどし、作物の収穫が不可能になった。北海道の発表によると、一連の台風による被害面積は3万9000ヘクタール、被害額は543億円に上った。

 2016年の北海道産春植えジャガイモの収穫量は前年より19万トン減った。ジャガイモ不足から大手菓子メーカーのカルビーと湖池屋は今春、相次いでポテトチップスの販売を一部休止した。両社は九州産ジャガイモの収穫が始まった6月に一部商品の販売を再開したが、まだ供給量は十分ではなく、全面再開には至っていない。

 被害が甚大だったことから、今春の北海道での作付けに使われる種イモの不足も心配されたが「規格外の種イモを使用し、なんとか作付けを終えた」(北海道農産振興課)。種イモは広大な畑に機械を使って植え付けるため、長さ16センチ以上の大きいものは機械に入らず通常は使用しない。しかし今春は手作業で小さく切るなどして対応。芽が一つでも入っていれば発芽するため、一つの種イモを六つ切りや八つ切りにして植えた農家もあったという。

 ジャガイモ生産に甚大な被害を及ぼした台風だが、過去にこのような例は見当たらない。1996年や2010年など不作の年はあったが「低温や日照不足が原因で、台風被害は極めて珍しい」(農林水産省)。一大産地の北海道に台風が接近することは少なく、昨夏の被害は「近年まれに見るレアケース」(いも類振興会)という声もある。

 ●北海道に産地集中

 北海道に産地が集中するのは、生育の特性ゆえだ。ジャガイモは冷涼で乾燥した土地を好み、日差しが多く夜間は冷え込む環境が最適とされる。日差しを浴びることでジャガイモの栄養素であるでんぷんを作る葉が茂り、夜間に温度が下がることででんぷんが葉から「実」の部分である地下茎に流れ、「実」が大きくなる。こうした条件を満たす産地は夏~秋の北海道や、冬~春の九州、春~夏の関東など。しかし九州や関東では適した気候が短く畑も広くないため、結果として北海道での収穫量が8割を占める。収穫を増やすには年に数回育てればいいが、続けて同じ畑で育てると連作障害が発生するため、小麦など別の作物の植え付けを挟まなくてはならない。

 ジャガイモの弱点は暑さと湿気。暑いと生育が抑制され、地中で育つため土の水はけが悪いと「実」が腐り病気も蔓延(まんえん)する。成長時期に低温で雨が多かったり、乾燥が続いた後に雨が降ったりすると発病が増える傾向にある。高温多湿の日本では病気が発生しやすく、産地では畑の水はけをよくするなどの病害対策をとってきたが、台風の前には無力だ。

 温暖化の影響で気温が上昇し近年、台風や大雨などの災害がより頻繁に発生する中、ジャガイモを守るすべはあるのか。農水省は「気候変動に負けない持続的な産地づくり」を掲げ、気象予測データの活用や土壌の排水性を高める研究を進めている。昨夏の台風被害を受け、国土交通省北海道開発局は北海道と共同で水防災対策検討委員会を設置。河川の幅を広げたり、堤防を高くしたりするなど治水事業に取り組む。災害に強い国づくりで農作物への被害も減らせるか。今年も台風の季節がやってくる。【今村茜】


 ■ことば

種イモ

 ジャガイモの「実」は地中の茎が太った部分。通常は「種イモ」と呼ばれる「実」を土に埋め、そこから育つ新しい「実」を収穫する。新たに育ったジャガイモの病気を防ぐために種イモは指定農家でのみ生産され、検査に合格しなければ販売や運搬もできない。

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