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余録

清の雍正帝の世…

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 清(しん)の雍正帝(ようせいてい)の世、官吏登用試験に「維民所止」(維(こ)れ民の止(とど)まる所)という題が出た。出題者が投獄されたのは、「維」は「雍」の字の首をはね、「止」は「正」の字の首をはねたとみなされたからである▲「文字(もんじ)の獄(ごく)」とは歴代中国王朝の言論弾圧をいう。こんないいがかりのような嫌疑でも処罰は厳しく、一族にまで及んだ。一方で文人の方も弾圧の目をかいくぐるように、表意文字である漢字を用いた権力への抵抗をくり返してきた▲綿々(めんめん)と続いてきた文字の獄の最後の被害者になることを望む--中国の人権活動家、劉暁波(りゅうぎょうは)さんはノーベル平和賞授賞式で代読された陳述「私に敵はいない」でそう述べた。陳述は中国での投獄の判決の2日前に書かれた文である▲天安門事件での最初の投獄後も国内にとどまり、9年前に言論の自由などを求める「08憲章」を起草して懲役刑を言い渡された劉さんだ。先の陳述は検察官らも「敵」でないと述べ、憎悪を超えて自由と進歩への力強い確信を語った▲その劉さんが出国を許されぬまま病死した。世界の心ある人々が想起するのはナチス政権の獄中でノーベル平和賞受賞が決まり、ほどなく病死した平和運動家の故事だろう。中国政府には自らしょいこんだナチスまがいの汚名である▲暴力や憎悪を拒み、ただ言論をもって言論の自由を求めて獄中にある者を中国政府は「無力」と思ったのだろうか。21世紀の世界におけるその大いなる「力」を信じ、闘い通した劉さんの「文字の獄」であった。

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