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子供のためにも卒業支援を…NPO世話人ら発信

NPO法人「キッズドア」が高校中退者などのために開いた勉強スペース。子どもがいる若い女性の利用もあるという=東京都新宿区で、黒田阿紗子撮影

 「高校生が妊娠したら即退学、でいいのか」。シングルマザー支援や貧困問題に取り組む関係者らから、そんな声が出始めている。妊娠した生徒の多くは自主退学の扱いで高校を去るが、国や自治体は実態を把握していない。専門家は「そのまま放り出されれば生活に行き詰まる可能性が高く、生まれる子にも貧困が連鎖する」と対応の改善を訴える。【黒田阿紗子】

 昨年春、NPOの立場で政策提言に取り組む「全国子どもの貧困イニシアチブ」の世話人3人は、議論するうち、日々の活動で同じ問題意識を持っていることに気付いた。

 「昔から妊娠した高校生は中退するのが当たり前になっているけれど、中卒と高卒では収入に差が出る。むしろ中退させないよう自立に向けて支えるべきでは?」と1人親を支援する「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長。子どもの学習支援に取り組む「キッズドア」の渡辺由美子理事長、保育事業などを手掛ける「フローレンス」の駒崎弘樹代表理事も賛同し、ブログなどで発信を始めた。

 妊娠を機に高校をやめ、パートナーとの新生活や子育てに夢を膨らませる生徒もいるが、現実は厳しい。夫婦が離婚する割合は10代後半が最も高く、シングルマザーになれば多くは生活に困窮する。改めて高卒の資格を取るにも、サポート校に通うのはお金がかかる。中卒でも働き口があった時代とは違い、生活保護に頼るか、性風俗業を選ばざるをえないケースも珍しくない。

 だが、高校側は通学の継続に抵抗感が強い。全国の産院でつくる「あんしん母と子の産婦人科連絡協議会」の鮫島かをる事務局長は、妊娠した生徒が担任教諭に「高校を続けたい」と相談したところ「他の生徒に悪影響が及ぶ。誰にも言わないでおいてあげるから自主退学しなさい」と言われたケースに直面した。「内緒で中絶すれば続けられ、産むと退学に追い込まれるのはおかしい」と憤る。

 「私、夢とかないんだよね。他に夢が見つけられてたら、子どもを産むのは今じゃなかった」。生活困窮者支援に取り組む一般社団法人「インクルージョンネットかながわ」の鈴木晶子代表理事は、女子高校生のこんな言葉が忘れられない。

 彼女は「大学に行くお金はないから、18歳で自立しなさい」と言われて育ち、中退後も親を頼れなかった。「貧困で選択肢を狭められ目標が持てないと『家庭』に憧れやすい。これが若年妊娠の背景にある」と鈴木さん。「生まれてくる子のために高校を卒業しよう、と思わせる支援が必要。国は実態を把握して服装や出席日数など配慮すべき例を示し、本人の退学の意思が強いなら、生活相談や資格取得の支援につなげるべきだ」と訴える。

自治体、実態調査なく「学ぶ権利を奪わないで」

 文部科学省によると2015年度の高校中退者は全体の1.4%の約4万9000人。「妊娠」は理由を調べる項目にないため、どの程度含まれるかは不明だ。人口動態統計では、16年に10代の母が産んだ子は1万1095人に上る。

 在学中に妊娠しても高校をやめなければならない規則はない。文科省は「学業継続の意思がある場合は、母体保護を優先して教育上必要な配慮を行う」との立場だが、15年には岩手の県立高が「妊娠は退学処分」との内規を設けていたことが発覚した。妊娠を「問題行動」と捉える風潮は学校現場で根強い。

 三重県内の高校の養護教諭(53)によると、保護者が「娘を好奇の目にさらしたくない」と退学を申し出ることもあるという。教諭は生徒に通信制などへの転学を勧めるが「妊娠したら学校を続けるべきでない、という社会の雰囲気がある」と指摘する。

 子どもの権利に詳しい山下敏雅弁護士(東京弁護士会)は「生徒や保護者には、退学を促されても断れるという認識が薄い。学習権は全ての子に等しく保障されていることを社会が理解すべきだ」と話す。

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