猛きん類のオオタカについて、環境省は、種の保存法に基づく「国内希少野生動植物種」(国内希少種)の指定を解除する方針を決めた。個体数が回復したと判断したためで、今秋にも正式決定する。
オオタカは、水田や畑、森林が混在する里地里山が主な生息地で、食物連鎖のピラミッドの頂点に立つ。里地里山の豊かな生態系が、生息を支えている。
希少種に指定されると、捕獲や輸出入が禁止され、土地所有者は「保存に留意する」義務を負う。結果的に乱開発の歯止めにもなっていた。
環境省は法の規定上、指定解除はやむを得ないと言う。だとしても、オオタカの生息地が、貴重な自然の宝庫であることに変わりはない。
解除後に、そうした場所をいかに守っていくのか。環境省は新たな対策に取り組む必要がある。
オオタカは開発などの影響で数を減らし、1984年の「日本野鳥の会」の調査では、国内で500羽以下になったと推定された。91年に環境省のレッドリストで絶滅危惧種となり、93年に希少種に指定された。
2005年開催の愛知万博では、会場候補地の里山「海上(かいしょ)の森」でオオタカの営巣が確認され、会場計画が変更されるなど、オオタカは自然保護の象徴的存在となってきた。
近年は生息数が回復し、成熟個体は2000羽を超え、都市部での目撃例も増したため、06年に絶滅危惧種から外れた。
「存続に支障をきたす事情が生じている」という希少種指定の基本要件に、オオタカが合わなくなったことは、確かだろう。
里地里山保護策として、環境省は一昨年、オオタカなどが生息する重要な500カ所を選定して公表した。だが、里地里山の自然を守る法制度はない。民有地も多いため、「これまで通り管理し続けることを義務づけたわけではない」と、説明している。
日本自然保護協会は、重要な里地里山を種の保存法に基づく保護区に指定する制度や土地の所有者を税制面で優遇する措置の創設などを政府に提言している。検討に値する考え方ではないか。
オオタカの指定解除を契機に、こうした議論を深めたい。