連載

イタリア・オペラの楽しみ

オペラ評論家の香原斗志さんのコラム。イタリア・オペラを中心にクラシック音楽全般について紹介。クラシックナビ連載。

連載一覧

イタリア・オペラの楽しみ

テノールの声はどこまで「発展」するのか~グレゴリー・クンデの「アンドレア・シェニエ」を見て

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
第1幕のマッダレーナ(マリア・ホセ・シーリ)とシェニエ(クンデ)(C)Yasuko Kageyama-Opera Roma2016-17
第1幕のマッダレーナ(マリア・ホセ・シーリ)とシェニエ(クンデ)(C)Yasuko Kageyama-Opera Roma2016-17

香原斗志

 アメリカ生まれのテノール、グレゴリー・クンデ(1954~)の声が日本のオペラファンに強い印象を与えたのは、2008年11月に行われたペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル(ROF)の日本公演で、ロッシーニ「オテッロ」のタイトルロールを歌ったとき、それから2013年4月、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場の日本公演で、今度はヴェルディ「オテッロ」のタイトルロールを歌ったときだろう。ともにドラマティックな表現のなかにオテッロの苦悩を浮かびあがらせた秀逸な歌唱だったが、役名は一緒でも、ロッシーニとヴェルディとでは求められる声も表現もまるで異なる。

 ロッシーニのそれにはアジリタも頻出し、装飾歌唱を前提にしたベルカントの高度な歌唱技巧が要求され、そのうえ高いDの音(三点ニ ※編注:中央のD=レから2オクターブ上のD)まで出さなければならない。一方、ヴェルディのオテッロ役はロッシーニが求めた様式的な歌唱からは遠く離れ、音楽と一体になったかのような言葉に沿って朗唱風に、それもかなりドラマティックに歌われる。ひとりの歌手がその両者を歌うのは無理があ…

この記事は有料記事です。

残り5217文字(全文5699文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る