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iPS創薬

世界初の治験へ…京大、難病患者に

iPSによる創薬のイメージ

 京都大iPS細胞研究所のチームは1日、筋肉や腱(けん)などの組織の中に骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」について、既存の免疫抑制剤「ラパマイシン」に進行を遅らせる効果があることをiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った再現実験で発見したと発表した。FOPの治療薬として国の承認を受けるため、実際の患者に投与する「治験」を近く京都大医学部付属病院で始める。iPS細胞を活用した創薬での治験は世界初。【野口由紀】

 研究成果の論文が1日、ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(電子版)に公開された。

 研究所の戸口田淳也副所長らによると、FOPは200万人に1人程度の割合で発症し、国内には約80人の患者がいるとされる。

 戸口田副所長のチームなどはこれまでに、筋肉などの骨化では遺伝子の突然変異が起こり、そこに「アクチビンA」と呼ばれるたんぱく質の刺激が加わって起こることを解明していた。

 今回、チームはFOPの患者から作ったiPS細胞を使い、FOPの病態を再現。その細胞に6809種類の化合物を加え、アクチビンAを添加。どの化合物が骨形成を阻害するかという治療効果を調べ、移植した臓器が拒絶されることを防ぐラパマイシンに効果があることを見つけた。FOPの病態をもつマウスにラパマイシンを投与すると、筋肉内などでの骨形成が阻害されることも分かった。

 戸口田副所長によると、治験は9月以降、20人の患者に対し52週にわたって実施する方針。山中伸弥所長は「この治験をきっかけに、iPS細胞を使った創薬研究がますます活発になり、他のさまざまな難病に対する新しい治療法の開発につながることを期待する」とのコメントを発表した。

「前進うれしい」細胞提供患者の母

 FOP患者で、iPS細胞での研究に協力するため2010年2月に京大病院で腕の皮膚細胞を提供した兵庫県明石市の山本育海(いくみ)さん(19)の母智子さん(43)は「一歩進んだことはうれしい。ただ、治験なので薬が完成しているわけではない。これからも親子で頑張っていきたい」と話した。【浜本年弘】


再生医療と2本柱…解説

 京都大がiPS細胞(人工多能性幹細胞)を活用して難病の進行を遅らせる薬を作り、世界に先駆けて治験に臨むことになった。iPS細胞で臓器などを作り出す再生医療は時間や費用もかかり、多くの患者をカバーすることが難しい。研究・実用化の本命は、より多くの患者に行き渡る可能性が高い創薬分野とも言える。

 iPS細胞研究で期待されているのが、細胞や組織を作り出し、患部に移植する再生医療への応用。既に理化学研究所が目の難病「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」の世界初の臨床研究を進めるなど、実用化に向けて歩みを進めている。そして、再生医療と並ぶ柱とされるのが創薬だ。患者の皮膚などからiPS細胞を作り、病気を再現して原因を調べ、病気に効く物質を見つける。今回の治験はiPS細胞を活用して行う初の例だ。創薬は再生医療と比べ、対象となる病気も多いとされる点でも意味が大きい。【鳥井真平】

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