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無届け老人ホームの増加 困窮者向けの法定施設に

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 古い民家やマンションを改装して高齢者に食事や介護サービスを提供する低額の介護施設(有料老人ホーム)が増えている。

 劣悪な住環境や違法な身体拘束が横行しているとの指摘がある。一方、行政に届け出をすると、建物や職員配置の法定基準をクリアすることを求められ、利用料を高くせざるを得なくなる。そのため、最近はお金のない高齢者のために無届けで運営している施設も多い。

 無届け施設は、2009年に群馬県渋川市の「静養ホームたまゆら」で10人が死亡する火災が起きた際、居室が狭く火災報知機も設置されていないことが問題となった。14年には東京都内の施設で認知症の人たちをベルトで縛るなどの虐待が行われていたことが発覚した。このため、厚生労働省は監視を強めてきた。

 ところが、この数年は無届け施設が急増し、昨年6月末時点で全国に1207カ所が確認されている。5年前の4倍に当たり、有料老人ホーム全体の1割を占めている。

 背景には困窮者が増えている現実がある。特別養護老人ホームは空きがない上、最近の「ユニット型」は食事や介護費込みで月15万円程度必要なところがある。有料老人ホームは通常月15万~20万円かかり、多額の入居金を求める施設もある。

 それに比べ、無届け施設は古い民家を改修するなどして建設コストを抑え、月10万円以下の利用料で運営しているところが多い。経管栄養など医療ケアの必要な人や寝たきりの人も安価な利用料で受け入れているところがある。

 無届け施設の7割は病院やケアマネジャーから身寄りのない高齢者を紹介されているとの調査結果もある。医療や福祉関係者の間では、無届けであることがわかっていながら、お金のない高齢者の受け皿として頼りにされているのが実態だ。

 監視を強め、劣悪な無届け施設を排除しなければならないのは当然だ。だが、それだけでは介護が必要な高齢者の急増に対応できない。

 地価の高い都市部では居室面積や設備などの基準の緩和を検討すべきだ。少し狭くても良質な介護を提供できるところを法定施設として認め、増やしていくべきである。発想の転換が求められる。

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