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九州豪雨

集落守った独自放送 判断基準は「岩」 大分

携帯電話を使って集落の各世帯に情報を伝達する「告知放送システム」を説明する藤井さん=大分県日田市大鶴地区で安部志帆子撮影

 死者36人を出した九州北部豪雨が発生から1カ月を迎えた。今なお5人の行方が分からず、最愛の人の姿を求めて濁流の後を捜す家族がいる。一方、あの日、過去の教訓を胸に犠牲者を出さなかった集落があった。さまざまな思いが交錯する被災地を、また台風が襲おうとしている。被災者の不安は尽きない。

 九州北部豪雨で大きな被害を受けた大分県日田市大鶴地区の上宮町集落(39世帯102人)では、市が避難指示を出す約5時間半前から3回にわたって住民に避難を呼びかけ人的被害をゼロに抑えた。集落の住宅の約7割が全壊や床上浸水などの被害を出しながら住民がスムーズに避難できたのは、集落独自の基準で避難を判断したおかげだった。

 「この放送を最後に町内の災害対策本部は大鶴公民館に移ります。私も避難します。豪雨が続いていて危険です。早めに避難してください」。7月5日午後3時過ぎ、上宮町で自治会長を務める藤井隆幸さん(68)は自宅から告知放送システムを通じて各家庭に避難を呼びかけた。午後1時台から始めた放送はこれで3回目だった。

 この日、上宮町では午後1時過ぎから猛烈な雨が降り始めた。市中心部ではまだ雨が降っていなかったが、限られた道路しかない山間部は避難の基準が中心部とは違う。「市から指示が出る前に自分たちで早め早めに判断しなければ」。藤井さんは、こまめに自宅裏の鶴河内川の水位や、気象庁の降水予報システム「ナウキャスト」をチェックして避難を呼びかけるタイミングを計っていた。

 最も頼りにしていた基準は、自宅裏の鶴河内川にある岩だった。「あの岩が隠れたら大水が来る」。小学生の頃から祖父母に川の水位がこの岩を越えたら避難するよう教えられていた。今回もこの岩が川の水で隠れたのを確認して避難を呼びかける放送を始めた。

 3回目の放送を終えた藤井さんは、車を持たない近所の60代女性ら2人を乗せ、自宅から約4キロ下流の大鶴公民館に向かった。市が大鶴地区などに避難指示を出したのは午後6時45分だったが、放送を聞いた集落の住民の多くは早めに避難していた。8世帯が自宅にとどまったが、翌6日には藤井さんが自衛隊と徒歩で集落に戻って全員の無事を確認した。

 今年1月、災害時に避難誘導や救助・救命活動などをする防災士の資格を取得したばかりだったという藤井さん。資格取得の講習で最初に言われたのは「自助」の大切さだったという。藤井さんは「私たちを救った岩は今回の豪雨で流されてしまったが、鶴河内川の堤防など新たな避難の目安を設定して地区で伝えていこうと考えている」と話した。【安部志帆子】

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