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「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。

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今週の本棚・この3冊

爆心地 川口隆行・選

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 <1>原爆詩集(峠三吉著/岩波文庫/518円)

 <2>この世界の片隅で(山代巴編/岩波新書/886円)

 <3>谷間 再びルイへ。(林京子著/講談社文芸文庫/1728円)

 「爆心地の話をつたえてくれる人は、いません」(丸木位里・赤松俊子『ピカドン』)。72年前の広島、長崎の夏。惨劇のもっとも中心にいた人たちは語ることさえ許されなかった。では、生き残った者たちや直接体験しなかった者たちは、どのように「爆心地」の経験と向き合い、受けとめればいいのか? 体験の有無に限らず、それとの距離を推しはかるように生きてきた戦後日本という時代。小説や詩、ルポルタージュといった文学は、集合的記憶としての被爆体験を考え、引き受けるうえで、いまなお有効なジャンルである。

 今年は峠三吉生誕100年。「ちちをかえせ ははをかえせ」(「序」)で有名な『原爆詩集』は、「原爆詩人」峠三吉の名前を世に知らしめた。他方、峠は、朝鮮戦争に抵抗した「朝鮮戦争詩人」でもあった。朝鮮戦争という新たな戦争に主体的に向き合うことで、原爆の記憶を再構成する力を獲得したのである。社会的テーマへの取り組みは、果敢な芸術的挑戦でもあった。岩波文庫版のアーサー・ビナードの解説「日本語をヒバクさせた…

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