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三浦雅士・評 『石川啄木論』=中村稔・著

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 (青土社・3024円)

狂気すれすれのところにいた歌人

 啄木観を一新する本。これまで誰もまともに啄木を読んでこなかったのではないかとさえ思わせる。著者も例外ではなかった。「石川啄木ほど誤解されている文学者は稀(まれ)だろうと私は考えている。私自身、必要に迫られて啄木を読み直す機会をもつまで、彼を誤解していたと思われる」というのだ。

 啄木といえば青春を感傷的に歌った歌人と思われているが、違う。「東海の小島の磯の白砂に/われ泣きぬれて/蟹とたはむる」で有名な『一握の砂』にしても、青春の感傷に訴えるものではない。広告に啄木自身「青年男女の間に限られたる明治新短歌の領域を拡張して、広く読者を中年の人々に求む」と書いているのである。「東海の」の歌にしても、啄木の人生に置いてみると「人生の辛酸を体験してきた成人の読者の鑑賞にたえる作品…

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