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競技の枠を超えて選手がそれぞれの思いを語り合う「Promises 2020への約束」は今回、国際オリンピック委員会(IOC)が若者への波及効果を期待する競技・種目の選手同士の顔合わせとなった。東京五輪の追加競技として採用されたスケートボードの池田大亮(だいすけ、17)=ムラサキスポーツ=と、五輪の新種目に選ばれた自転車BMXフリースタイルの中村輪夢(りむ、15)=フリー。速さ、高さ、危険さなどを競うエクストリームスポーツ(Xスポーツ)同士の対談は7月に神奈川県藤沢市で開催された湘南オープンの合間に行われた。(この対談は7月16日行いました)【構成・田原和宏】
「跳んでいるなあ」「メーク率良すぎでしょ」
池田 久しぶり。最近どうしてた。
中村 「キャンプ・ウッドワード」(※米国ペンシルベニア州などにあるXスポーツや体操などの民間の練習施設)に行ってた。
池田 何しに。
中村 練習。(スケボーも拠点として場所は)一緒でしょ。
池田 どのぐらい。
中村 2週間ちょっと。
池田 練習か。ウッドワードはいいな。
中村 最高だよ。米国はいいよ。
池田 こっちは暑いからね。
中村 そっち? 練習環境のことかと思った(笑い)。
池田 日本はじめじめしているから。米国は(空気が)からからしているから調子もいいし、練習に合っている。
中村 (滞在中は)スコールとかもすごかった。
池田 僕が行った時は全然、雨が降らなかったなあ。
中村 日本人1人だった?
池田 泊まった所は1人だったけど、ダウンタウンに行けば。(仲間と)集合して滑っていた。1人? まじ?
中村 ずっと1人だった。
池田 ずっと1人? 英語しゃべれるの?
中村 いや、ノリで(笑い)。なんとか。
池田 ノリ? わかる(笑い)。
中村 もっと英語をしゃべりたいなと思った。
池田 でもあっちに行けば、聞き取れるでしょ。
中村 逆。しゃべれるというか、どっちかといえばしゃべるほうがまだ。速すぎて聞き取れない。
池田 まじ? 俺は何となく聞き取れるけど返せない。パニクっちゃう。
中村 (英語の会話が)速すぎて、えっ? みたいな。
池田 ペラペラペラって。暗号みたいでしょ。やばいね。

――2人が最初に会ったのはいつ。お互いの印象は。
池田 初めて会ったのは(カシオ計算機の腕時計)Gショック(の大会)だよね。
中村 そう。昨年7月の(Gショックの)「リアルタフネス」(※スケボーやBMXなどを中心にスポーツや音楽、ファッションを融合したイベント)。印象はどうだったかな。
池田 僕の印象はすごく(自転車が)跳んでいるなあという感じ。人よりも倍ぐらい跳んでいる。すげえ、みたいな感じだった。
中村 メーク率(※技の決定率)良すぎでしょと思った。
池田 いや、そんなことはないよ。
中村 あの時良くなかった?
池田 まあまあだった。あの時は。必死だった。
中村 予選は完璧じゃなかった?
池田 完璧だった。
中村 神っていたからね。
池田 あれは良かった。
中村 あの時、俺、足をぐねってチョーテンパってた。

――お互いに、どういうところがすごいと思った?
池田 僕はすごくエアが高くて、そういうところがすごいなと。
中村 ありがとうございます。僕はパーク(※湾曲した滑走面を組み合わせたコースで演技)でもストリート(※手すりや階段などの障害物を使って演技)でも、乗れるのはかっこいいなと思った。
――2人は大会でよく顔を合わせる?
池田 「キメラ」(※スケボーなどXゲームが集まったイベント)とか。
中村 ショーだね。大会ではあまり。
池田 BMXとスケボーが合わさった大会はあまりないので。
――技などの共通点は。
池田 エア(※ジャンプ台などを使い、空中を跳ぶ技)かな。
中村 (BMXの)フレア(※縦回転と横回転の複合技)?
池田 そうだね。
中村 (BMXもスケボーも)同じような回転ができる。
――つまりどういうこと。
池田 アール(※曲走路のジャンプ台)で前方宙返り気味の回転をして下りるという技なんです。スケボーで言ったら。前に倒れるように跳びながら回転する、前宙して下りる技なんですが。スケボーはマックツイスト(※前方縦回転と横1回半ひねりを織り交ぜた技)、BMXではフレア。
中村 フレアですね。僕の場合は後ろ1回転と横半回転ですね。
池田 BMXはこう(ハンドルを握りながら後ろに回転する仕草)。スケボーはこう(頭を前に倒し込みながら体をひねる仕草)だからね。そこの違いだね。

――どちらも東京五輪の競技や種目に選ばれた。
中村 いろんなところでBMXを取り上げてもらって、多分ちょっとは広まったかな。
池田 僕は五輪に決まったことがきっかけで、取材が多くなった。今すごいキッズが多い。そういうところでも、スケボーが広まっているなと実感している。
――10代半ばで注目されるというのはどう? 大変では。
中村 いや、うれしいですね。
池田 僕は逆に人から見られて、例えばこういう湘南オープンなどで人から見られ、自分ができるトリックをして盛り上がるとすごくテンションが上がる。難しい技をどんどん出していける。
中村 そこは多分、僕も一緒。こういう競技は歓声でテンションが上がって、ちょっとむちゃしてみようかなというところはありますね。
――五輪に選ばれて、身の回りの変化は?
中村 スーパーで声かけられた。おじさんに。うれしかった。
池田 俺もコンビニに入って「あれ池田大亮じゃね」みたいに話しかけられたことはあります。
――池田選手は2歳でスノーボード、4歳からはスケボーを始めた。中村選手は3歳から。幼い頃に競技を始めて、そのままのめり込んだ理由は?
中村 楽しくなかったら続けていない。自転車で跳んだりする楽しさ、新しい技を習得した達成感でのめり込んだというか、ずっと続けている。
池田 僕は父と一緒に始めたのがきっかけ。気がついたらやっていた。最初は遊び感覚でやっていたけど、練習場所には友達がいて、技を見せ付け合いながらスキルを上げた。友達がいると楽しくて。スケボーは楽しいですね。
中村 楽しいところですか? いろんなスタイルがあってストリートも楽しいですけど、僕はジャンプしている時が気持ちいいですね。
――どちらも米国が本場。米国に行って何を感じていますか?
中村 レベルが違うなということですね。刺激を受けて僕も頑張ろうという感じですね。
まだまだ米国の壁は高い
――何が違う?
中村 スキルはまだまだ。例えば? 技の難易度とか、僕ができても他の人はメーク率が良かったりとか。まだまだ米国の壁は高いなという感じですね。
池田 僕も同じでレベルの違いだったり、環境が違ったり。スケートパークの数が多いですね。
――ずっと米国にいたい?
中村 楽しいから練習になるし、米国人と一緒に交流し、一緒にセッションし合えるというのはいいですね。
池田 日本人と滑っているよりも、米国人と滑っているほうがやっぱスキルは上がるので。ずっとあっちにいたいけど、日本食も食べたい(笑い)。日本に帰りたいという時もあります。
――何が食べたくなる?
池田 ラーメンとおすし。
――中村選手は?
中村 (米国は)ステーキはあるのですが、日本で焼き肉も食べたいし、たこ焼きも食べたいです。
――お金を稼ぐという意味では2人ともプロだが、自分の考えるプロ像は?
中村 世界で活躍して大会で結果を残して、(自分のビデオ)映像も出して。プロといったら僕も好きなライダーがいる。(BMXの世界では)あこがれられるようなライダーがプロと呼ばれる。
――もうプロ?
中村 まだまだです。
池田 僕はいま、海外で大会にアマチュアで出ているが、大会でいい順位を出せばプロの大会に出られる。プロの大会に出られる資格を取り、プロの大会でいい成績を取り、海外の有名な板のブランドが(スポンサーに)付いて、そこから自分のシグネチャー(署名)付きの板を出すというのが、プロの道だと思います。BMXはどうすればプロになれるの?
中村 どうすれば? 難しいなあ。
池田 スケボーは自分のシグネチャーの板が出ないとプロとは呼ばれないから。
中村 (BMXは)シグネチャーがなくても、プロチームに入ったりすればプロと言えるかな。
――今年の目標は?
池田 俺の目標は「TAMPA AM(タンパアマ)」(※米国フロリダ州タンパで毎年開催されるアマチュアの登竜門となる大会)で3位以内。
――昨年の予選は3位通過した(最終順位は15位)。昨年を振り返って。
池田 今年は「DAMN AM(ダムアム)」(※世界各地で行われるアマチュアのシリーズ戦)で優勝(6月の米国コスタメサ大会)している。知名度も上がっている。今年もタンパアマに出て、昨年よりはいい成績を出したいと思っている。
――全米最高峰のストリートリーグに招待されるには。
池田 ダムアムは年間8戦あるが、1位を2回取れば(対談後のシドニー大会でも優勝して既に今季2勝)年間チャンピオンの可能性も出てくる。それを狙っている。
中村 今年の目標ですか? 11月に中国・成都でBMXのワールドカップ(W杯)も兼ねた「FISE」(※エクストリームスポーツ国際フェスティバルを意味する。Xスポーツの国際シリーズ大会。今年はフランスなど計4戦が行われ、年間1000万人もの観客が見込まれる)という国際大会がある。昨年は15歳になっていなかったのでアマクラスでの出場だった。今年からはプロに出られるので。一番でかい大会なので、決勝を目指して頑張りたい。
五輪ではスキルを出し切る

――最後に。東京五輪ではどんな姿を見せたい?
池田 五輪に出られたら、自分のスキルを全部出し切って観客を沸かせたいです。
中村 あと3年ある。スキルを上げて、僕は高いジャンプが得意なので、世界の誰にも負けない、一番高いジャンプをしたい。
――どちらも見せる要素が強い競技。メダルよりも自分の個性を出したいという思いのほうがやはり強い?
池田 どっちもどっちですね。
中村 メダルもとれたらうれしいよね。
池田 そうだね。
中村 自分のスキルを出し切ってそれでメダルを取れなかったら、スキルが足りないだけ。五輪で結果を出せたら一番ですね。
なかむら・りむ 京都市出身。BMXの専門店を営む父辰司さんの影響で3歳から競技を始め、中学生でプロに転向した。15年には米国で開催された優秀なアマ選手発掘を目的としたツアー大会の15歳以下の部で優勝したほか、昨年は国際大会FISEのアマ部門も制覇。高校生となった今季は世界選手権など本格的に海外の大会に参戦する。
いけだ・だいすけ 東京都大田区出身。4歳の時、スノーボードの夏場の練習として始めたスケートボードに夢中に。15年に米国の14歳以下のアマチュア大会で優勝。昨年は国内プロツアーの年間王者に輝き、今年4月の全日本選手権でも初代王者に。今季はアマ選手の世界シリーズ「ダムアム」で2勝を挙げるなど好調を維持する。