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文芸ジャーナリスト・酒井佐忠さんの「詩」に関するコラム。

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塚本邦雄の全歌集=酒井佐忠

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 戦後の日本に批評的な眼差(まなざ)しを注いだ歌人・塚本邦雄の全容を知る『文庫版塚本邦雄全歌集』(全8巻、短歌研究社)の刊行が始まった。第1回配本は、2005年に没する前の10年間に編まれた三つの歌集『汨羅變(べきらへん)』『詩魂玲瓏』『約翰(ヨハネ)傳僞書(でんぎしょ)』のほか未収録作品などを収める『第八巻』。短歌人生の総決算となる最晩年の貴重な作品群だ。『詩魂玲瓏』以後の2冊は、これまでの『全集』(ゆまに書房)には入っていない。

 かつて前衛短歌の巨匠と呼ばれた塚本だが、彼が短歌に求めたものは多岐にわたる。「塚本短歌は、それぞれの時期の文化・文明が孕んでいる矛盾や問題点を、容赦なく白日の下に曝し、攻撃した」と監修の島内景二は書く。さらに若い日に戦火を逃げ惑った経験から、人間の弱さと愚かさを知り、「現在は、戦争と戦争の間であるという危機感」を持ち、現実を直視しつつ表現したと指摘する。その「予見能力」が現れる最晩年の3歌集であ…

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