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連載小説 ストロベリーライフ

/50 苺畑の新たな金脈 作・荻原浩 題字・画、佃二葉

=画、佃二葉

 第二ハウスの中に入った恵介(けいすけ)は、眩(まぶ)しさに目を細めた。

 九月中旬の土曜日だ。設備工事は八月の末に終わり、高設栽培の準備も整っているが、まだ外気温が高いからハウスは被覆していない。骨組みだけの屋根から朝日が射(さ)しこんでいる。地上九十センチの高さに並ぶ栽培槽に張った真っ白なマルチシートが、生まれたての光を照り返しているのだ。

 今日から第二ハウスの定植を始める。定植は、ポットで育ててきた苗を本圃(ほんぽ)に植える、苗づくりのクライマックスであり、苺(いちご)づくりの本格的なスタートでもある作業だ。従来通りの土耕栽培で育てる第一ハウスの定植はすでに終わっている。ここでの作業を済ませれば、新・望月農園の準備は完了。気合を入れるために、恵介は頭にタオルの鉢巻きを巻いていた。

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残り2913文字(全文3260文字)

荻原浩

さいたま市出身。成城大卒。1997年「オロロ畑でつかまえて」で小説すばる新人賞を受賞してデビュー。「海の見える理髪店」で第155回直木賞受賞。東京都在住。

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