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時代の風

各界の文化人が、それぞれの視点で混迷する時代を読み解きます。

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科学技術の行方=総合研究大学院大学長・長谷川眞理子

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長谷川眞理子氏=中村藍撮影
長谷川眞理子氏=中村藍撮影

望む未来の姿、自問を

 以前、本欄でも指摘したが、科学技術の行方がどうなるのか、私はいろいろな意味で危惧している。何が原因かといえば、現在の科学技術が、私たち人間自身を直接に変える能力を持つ段階まで来たのだが、私たちは私たち自身について、まだ十分に知ってはいない、ということなのだ。

 自動車や電車や飛行機を持つようになったとき、私たちは、物体の運動や燃焼に関する基礎的な物理学をかなりの程度に理解していた。その上で作り出した自動車や電車や飛行機の技術は、うまくいかないときにどうするかについても、おおかた制御可能な範囲にあった。しかし、こんな技術が、その技術以外の側面で人間生活にどんな影響を及ぼすかについては、誰も考えていなかったところがミソである。原子力関係の技術については、うまくいかなかったときにどうするか、まだ本当に自信をもって制御できるとは言い難いのではないか。

 土木についても、いろいろな面で実は何も分かっていないのに、できることだけをやって突っ走ってきた面がある。河川というものは、それを含む周辺の生態系全体の一部であるのに、水を通すただの配管のように考えて護岸工事をし、生態系を破壊した。生態系という複雑系を十分に理解していないにもかかわらず、ある側面の利便性だけを求めたのである。

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