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張競・評 『世事は煙の如し 中短篇傑作選』=余華・著

 (岩波書店・2484円)

自己の彼岸化を独創的な文体形式で

 表題作は不吉な予感のする書き出しだ。

 「窓の外に、この春最初の涙が落ちていた。7が病床について、もう数日になる」。陰湿な雰囲気が漂う物語の展開を暗示するかのように、すべての登場人物には名前はない。1から7までの数字で表示されているが、1と5は最後まで小説の舞台に顔を出していない。数字の五人をはじめ、占い師、産婆、運転手など職業名しか知らされていない者もいれば、「灰色の服の女」とか「盲人」など外見的な特徴だけ記されている者もいる。鉛色の雲に覆われた田舎町の窮屈そうな空間の中で、彼らは魂のない人形のようにせわしく動き回っている。

 川沿いの小さな町という設定だから、名字がないのは平凡な市民という類似性と、いずれも取るに足りない死…

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