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地域医療を考える

認知症の周辺症状 徘徊や暴言、抑うつ状態 寄り添うケアで改善 家でも生活リズム整えて

 認知症患者と予備軍(軽度認知障害=MCI)を合わせるとすでに1000万人を超えているとする研究者もいる。患者の行動や言動をスタッフが全肯定することで、暴言や徘徊(はいかい)などの症状を改善して、穏やかな生活を送れるようにしている橋本病院(三豊市山本町)の橋本康子理事長(60)に認知症患者家族に役立つケアの要点を聞いた。

     -1時間前に食べた昼食のことを忘れたり、子どもの顔がわからなかったり、徘徊したり、家族に突然、当たり散らしたり……。認知症には多様な症状がありますが、どのように対応されているのですか。

     ◆症状は多様ですが、大きく二つに分けることができます。中核症状と周辺症状です。中核症状はごはんを食べたことを忘れてしまう記憶障害、ここがどこかわからない、今日が何日だかわからない、家族の顔がわからないなどの見当識障害、物事の段取りや会話の理解・判断力の障害、炊飯器など家電が使いこなせなくなるなどの実行機能障害と物の名前や服の着方を忘れてしまう失語、失認、失行などです。

     周辺症状は人によって多彩な症状が表れます。主な症状は徘徊や暴言、暴食、家から外に出ようとしないなどの抑うつ状態などがあります。壁紙などを食べる異食、どこにでも排せつをしてしまう、介護を拒否してしまうといった症状もあります。周辺症状の方が認知症の中核症状だと思う人もおられます。しかし、中核症状はいわゆる物忘れなので、日常生活に支障がなければ、家族は「年だから」と考えて、認知症だとは気付かないことがままあるのです。そして、中核症状を完治させることは今の医療では困難ですが、周辺症状についてはケアの仕方によってかなり改善されます。

     -どのようなケアをされるのですか。

     ◆当院の方針は「縛らない看護」です。「縛らない」と言うのは、患者さんがベッドや車いすから転げ落ちないように体を拘束するなど身体的に「縛る」ことはもちろん、患者さんに強制的に何かをさせたり、患者さんがどんなことを言っても否定したり、どんな行動をしても制限したりすることもないということです。患者さんのことを全面的に肯定することです。

     -具体的に説明していただけますか。

     ◆施設に入っていた高齢の男性ですが、一日中、飲み食いせず休まずに歩き続けて、失禁もして、施設も困っていると入院してこられました。当院でもやはり24時間飲まず食わずで、歩き続けていましたが、1人のスタッフがずっと何もせず、おじいさんに付き添いました。そうしているうちに、歩き回ることはなくなりました。

     -付き添うだけでですか。

     ◆まったく何もしないというのではありません。飲み食いしないので脱水症状でふらふらになることもあります。尿や便を垂れ流すこともあります。おじいさんのことをよく観察して、のどが渇いていそうな時に「水を飲みませんか」、また、食事時で付き添いスタッフもおなかがすいてきたら「おじいさん、おなかすかない? 何か食べませんか」、尿意を催してきたと判断したら「トイレへ行きませんか」、夜になったら「眠くないですか」と声をかけます。でも、付き添いのスタッフは「水を飲みなさい」「食べなさい」と強制したり、無理にトイレに連れていったり、ベッドに寝かしたりはしません。患者さんの意のままにしてもらうのです。

     -それだけで、歩き続けることが治まったのですか。

     ◆4、5日で水を飲むようになり、2週間ほどで夜は寝て、食事もされるようになりました。医学的に解明されているわけではありませんが、スタッフがずっと寄り添っていることで、患者さんが一人ではないと感じ、自分のことをばかにしないで、認めてくれていると感じることで症状が治まってきたのではないでしょうか。

     -認知症の患者さんを一人の人間として認めることがケアには大切なのでしょうか。

     ◆認知症の患者さんは何もわからないのではなく、喜怒哀楽がはっきりとしていて、かなりセンシティブです。赤ちゃん言葉で対応すると、自分のことをばかにしていると思って、プライドに傷がつくのです。言葉でばかにされたことを表現することが難しいので、それに対する表現として暴言などの行動として表れるのではないでしょうか。ですから、人として尊敬して、患者さんに寄り添い共感することで、行動障害が起こらなくなってくるのです。

     -でも、患者さんを全肯定して、寄り添うのは難しいことではないでしょうか。

     ◆そうですね。スタッフも初めのうちは、どうしても口を出してしまうことがあります。でも、患者さんに寄り添い、行動障害が治まってくると、それが成功体験となり、患者さんとシンクロすることが当たり前になってくるのです。

    気になったら早めに相談を

     -家で認知症の親などをケアする際にも役立ちそうですが、大変そうですね。

     ◆家族は大変です。親が認知症になると、子どもは「こんな親ではない。もっとしっかりしていたのに」と、なかなか受け入れることができません。また、親の方も認知症になり始めた時には「これから認知症になっていくのか」と、不安と恐怖に襲われています。そんな時に家族の「ついさっきのことも忘れたの」とか「そんなこともできないの」などと責めるような言動に反発して、暴言などの行動がみられるのです。なかなか難しいですが、親の現状をすべて受け入れることで、少しでも周辺症状の出現を抑えることができるのではないでしょうか。

     -病院でしておられるケアで家でもできることはありますか。

     ◆生活のリズムを作ることです。朝起きたら顔を洗って、トイレで排せつし、着替えをする。そして、朝食を食べる。朝食が終わったら、テレビを見るのではなくて、散歩や買い物など外に出るようにすることです。

     日々の目的を持つことがポイントです。デイサービスを利用してもいいですし、ガーデニングが趣味だったのならガーデニング、農業をしていた人なら畑仕事とか、とにかく体を動かすようにするのです。生活にリズムができて、体を動かしていると、ごはんもおいしく食べられますし、夜は疲れて眠れるようになります。周辺症状が表れにくくなるのではないでしょうか。

     -周辺症状への対応はどうするのがいいですか。

     ◆やはり、認知症の人の言動を抑制、否定しないことが重要です。先ほども言いましたが、認知症の人は自分の存在を認められることで、精神的に安定します。また、何かできることを任せることも大切です。当院でも朝ごはんを炊いたり、みそ汁を作ったり、できることはしてもらうようにしています。それによって、症状が安定しています。

     家でも、「おばあちゃんの作ったおかずが食べたい」などということもいいかもしれません。短期間の記憶は失っていても、昔の記憶はかなり残っています。特に、昔取った杵柄(きねづか)ではありませんが、得意な料理は作り方を覚えているものです。家族がそれを食べて喜んでいる姿を見れば、たとえ子どもや孫の顔を覚えていなくても、うれしい、楽しいという感情が湧き、心理的にいい影響を及ぼすのではないでしょうか。可能であれば、ペットを飼って、世話を任せるということもいいですよ。ちょっとした責任を持ってもらうなどのストレスをかけることが症状を進行させないことにつながります。

     -親などが認知症ではないかと気づいたらどうすればいいですか。

     ◆認知症専門外来に行くことを勧めます。本人が行かなくても、家族が本人の様子を伝えて、どのように対応すればいいかを聞けば、適切なアドバイスをしてくれます。介護関係の人もいますので、行政の支援なども教えてもらえます。早めに対応することが大切です。

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