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SUNDAY LIBRARY

著者インタビュー 田中美穂 『星とくらす』

天体の動きを図にしようとちゃぶ台の周りを回ってみた(笑)

◆『星とくらす』田中美穂・著(WAVE出版/税別1600円)

 夜空に輝く星を眺めていて、「あれは何座?」と尋ねられても、すぐに答えられない人は多いだろう。季節によって、あるいは場所によって見え方が異なるし、「うお座」「さそり座」と言われても、なかなかその形だと分からないだろう。

 そんなシロウトが愉(たの)しく読めて、星についての理解を深めることができるのが、『星とくらす』だ。根っから文系の私は本書ではじめて、恒星と惑星、彗星と流星の違いを理解できた。

「私も子どもの頃は、星の知識は全然ありませんでした。両親の田舎が中国山脈の山あいにあって星がよく見えるのですが、漠然と眺めていただけなんです」

 それが、地元の倉敷天文台で天体望遠鏡をのぞかせてもらったことをきっかけに、星への興味が高まっていった。

「その時見たのがはくちょう座のアルビレオです。これは、ふたつの星が重なって見える『二重星』です。その後、いろんな星を見るようになりましたが、いまでもアルビレオには親しみがあって、『わたしの星』という感覚がありますね」

 田中さんは倉敷で「蟲文庫」という古本屋を営んでいる。さまざまな本が入ってくるという仕事柄もあり、星に関する本を読むようになる。

「野尻抱影の『星三百六十五夜』や稲垣足穂のエッセーを読んで、そこに出てくる星座を探したりしました。この本では触れませんでしたが、SFやファンタジーにも星が出てくる作品が多いですね。レイ・ブラッドベリ『火星の笛吹き』は愛読しています」

 星を見つけたら帰って本で調べるようにすると、だんだん慣れてくると田中さんは言う。

「季節ごとに見える星が違うので、夏は何が見えるとか知っておくと見つけやすいです。星は地上の季節をやや先取りして見ることができます。西の空には少し前の季節の星があり、東の空にはこれからの季節の星があります。昔の人は星を眺めて、方角や季節を知ったんです」

 星を見ることの魅力は「偶然性」にあるそうだ。

「季節や天候、気温に加えて、その場に自分がいることで、はじめて見ることができる星があります。そういう星を誰といつどこで見たかが、記憶に残ります。それに星座の全体が見えないときでも、記憶や知識で補足して、なんとなく見えてくるような気がするのが不思議です」

 天文の専門家ではないので、日常の言葉で読者に分かるように書くのは苦心したという。

「木下綾乃さんの説明イラストも、何度も手直ししてもらっています。天体の動きを図にしようとして、ちゃぶ台の周りを自分で回ってみたり(笑)」

 星についての基礎知識だけでなく、天文台や星の方言などのエピソードも多い。

 田中さんは苔や亀などの動植物や星のように、自然が生み出したものへの興味があるようだ。「はじめに」に、「わたしたちの身のまわりには、少し意識して目を向けるだけで、いままで見えていた風景ががらりと変化するような、美しく、魅力的なものであふれている」とある。

 読み終わると、夜空を見上げたくなる。

(構成・南陀楼綾繁)

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田中美穂(たなか・みほ)

 1972年、岡山県生まれ。倉敷市の古本屋「蟲文庫」店主。著書に『苔と歩く』『亀のひみつ』『ときめくコケ図鑑』『わたしの小さな古本屋』などがある

<サンデー毎日 2017年9月10日号より>

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