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夏休み

「自由研究」歴史や意義を自由研究してみたら…

「図書館を使った調べる学習コンクール」の受賞作品(昨年)。写真やイラストを用いてスケッチブック1冊分程度にまとめられている=東京都文京区で2017年8月29日、中村かさね撮影

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 夏休みも大詰めで、自由研究の宿題に頭を悩ませた親子は多い。ベネッセの調査によると小学生の子供の自由研究を手伝う親は7割に上っている。研究の方法からまとめ方まで指南してくれるキットや宿題代行業者の需要も年々伸びている。夏休みの課題として定着している自由研究。その存在意義は?【中村かさね/統合デジタル取材センター】

    自由研究の完成品「メルカリ」で売り買い

     「これ、欲しい! お小遣いで足りるかなあ」

     8月下旬、東京都品川区に住む女性(39)の小学2年の次女がこうつぶやいた。フリーマーケットアプリ「メルカリ」で読書感想文や自由研究の完成品が売買されている、と知ったのだ。本当は人類の祖先をたどる研究を思いつき図書館で本を借りたのだが、途中で挫折したという。

     女性は「できる範囲でいいから自分でやりなさい」と、量販店に並んでいる自由工作の製作キットを買い与えた。昨年の夏は小学6年だった長女がインターネット上で紹介していた「木製トランペット」、次女が製作キットの「ビンゴマシン」を作りたいと言い出し、夜中まで手伝うはめになった。

     母親は「長女は中学受験もあって本当に大変だった。今年はもう手伝わない。提出できない、というのも選択肢の一つ」と割り切り、こう嘆いた。「子の好奇心のおもむくままに、興味があることに好きなだけ取り組ませてあげられたら理想的です。でも、親も子も忙しくて余裕がない。お金で解決したいと考える人がいるのは理解できる」

    「自由研究」登場は大正時代?

     北海道教育大の安藤秀俊教授(理科教育学)によると、「自由研究」という言葉が使われるようになったのは大正時代だという。詳しいことは不明だが、当時の小学校で、今で言えば「総合的な学習の時間」のようなことが行われていたようだ。

     敗戦から間もない1947年には学習指導要領で正式教科となったものの、戦後の混乱で教育現場がうまく機能せず、数年後に廃止された。しかし、言葉は生き残って広く浸透し、夏休みの宿題として今に受け継がれている。安藤教授は「むかしは夏休みが今よりも長く、子供も自由な時間がたくさんあった。長い休みを使って、ふだん疑問に思っていることを自由に調べてみなさいよ、というのが趣旨。キットや代行業者に任せるのは本末転倒です」と指摘する。

     とはいえ今の子供は忙しい。品川区の女性は共働きで、夏休み中も次女は毎朝9時から午後6時まで学童保育に通っている。高学年になれば習い事や受験勉強に費やす時間も増える。政府が進める「キッズウイーク」が導入されれば、子供が自由に使える夏休みの時間はますます少なくなる。「正直なところ、親は家族旅行や帰省に時間を割くのが精いっぱい。宿題に追われる子供もかわいそう。学校側も前年踏襲で宿題を出すだけで、重視しているとは思えません」と女性は不満をもらした。

    研究1件1万5000円~代行業者に注文殺到

     「夏休みの宿題は無駄なものが多すぎる。いらないんじゃないでしょうか」

     子供に代わって読書感想文や自由研究を仕上げる「宿題代行屋Q」。その代表を務める板津知直さんは言う。同社は3年前にインターネット上でサービスを開始。料金の目安は自由研究が1万5000円、自由工作が3万円。テーマ設定やレベル、内容などを事前に打ち合わせ、スタッフが一つ一つ手作りする。口コミや報道などで認知が広がり、現在の売り上げは10倍に伸びた。受験を控える小学校高学年の子供の親を中心に依頼が殺到し、7月中には予約が埋まる。半年以上前から予約する人もいるという。

     宿題を代行することに罪悪感はないのか。

     「一切ないです。依頼する親も想像以上にドライですよ。代行業は時代に合ったサービスだと感じています」と板津さん。「興味がない子や時間がない子にも一律に強制するのは無理がある。グループ研究や選択式にするなど、子供の自主性を尊重するような宿題の出し方に変えたらいいのではないか」と提案する。

     「1日でできる」とうたってテーマ設定から実験方法、まとめ方の実例まで指南してくれる実験キット付き書籍も人気だ。民間企業が主催する自由研究のための体験教室も申し込みが殺到する。できるだけ短時間で簡単に終わらせたい、というニーズに応えるサービスは世にあふれている。

    現場教師は「大人が代行したものは分かる」

     教師たちはどう見ているのか。

     「既製品や大人が代行したものは見れば分かる」と現場の教師は口をそろえる。杉並区の男性教諭は「どうやったのか、子供に聞くこともある。成績をつけるためのものではないが、コンクールに出す作品は子供が主体となって作製したものを選ぶ」と明かす。高学年になるほど、力作と手軽に仕上げたものと二極化する。「無駄と言われると悲しいが、身の回りの疑問を自分で調べるという学習趣旨は、意義があるはずです」と強調する。

     しかし実際には、小学生がテーマ設定からまとめまで1人ですべて行うのはほとんど不可能だ。「図書館を使った調べる学習コンクール」を主催する公益財団法人「図書館振興財団」の奥村道明事務局長は、「親が関わらない作品はない。問題は関わり方だ」と指摘する。子供の好奇心をすくい、どんな方法で調べ、どうまとめるか。大人の協力は、博物館に連れて行くなどの環境提供や助言レベルにとどめるべきだという。

     例えば過去には「なぜ子どもは『早く寝なさい』と言われるのか」をテーマに据えた応募作品があった。何時まで起きていられるか実験し、睡眠中に体内でどんなことが起きているか、目覚めの仕組みなどを調べたという。

     「素朴な疑問を持った子に対し、大人はその興味を広げる手伝いをしてあげてほしい。経過が大事で、結論まで至らなかったり、『分からない、ということが分かった』という結果になったりしてもいいのです」

     自由研究について、いろんな見方がある。存在意義について、改めて議論があってもいいと思う。

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