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社説

小池都知事の追悼文見送り 歴史の修正と見られぬか

 30年ほど前に刊行された「写真報告 関東大震災朝鮮人虐殺」(影書房)には、当時の生々しい証言が載っている。思想家の吉野作造は「中央公論」に朝鮮人虐殺に関する論考を寄せた。史実に残る重大な事件だ。

     その犠牲者を追悼する9月1日の式典に、東京都の小池百合子知事が追悼文を送ることを見合わせた。

     式典は、市民団体の日朝協会などが主催し、墨田区にある都立横網(よこあみ)町公園で毎年9月に開催してきた。

     送付は歴代都知事の慣例で、小池氏も昨年は送っていた。しかし、小池氏は記者会見で「特別な形での追悼文は控えた」と述べるだけで具体的な理由は言及を避けた。

     見送りのきっかけは3月の都議会での質疑とみられる。自民党都議が、6000人余りとされる犠牲者数の根拠を疑問視し、小池氏に追悼文送付の中止を求めた。

     震災直後に「朝鮮人が井戸に毒を入れている」などとデマが広がり、あおられた民衆が自警団などを組織し、多数の朝鮮人が虐殺された。

     横網町公園の追悼碑には「六千余名」とある。震災直後に朝鮮人調査団が調べた数字が根拠とされる。

     内閣府の中央防災会議の報告書は、虐殺された人数を震災による死者数10万5000人の「1~数%」と推計している。千人単位の虐殺があったことは国も認めている。

     都知事があいさつ文を出す機会は多い。なのになぜ、この件に限って見送ることを決めたのか。

     小池氏は「3月に(都慰霊協会主催の)大法要に出席して関東大震災で犠牲になったすべての方への追悼の意を表した」とも説明している。

     当時の民族差別を背景にした虐殺の犠牲者は、直接震災で亡くなった人と分けて考えるべきだ。

     もし、虐殺を震災被害のひとつに埋没させようとしているのなら、事件の意味をすり替える歴史修正主義と見られても仕方がない。

     小池氏は知事就任後、都有地を韓国人学校に有償貸与する計画を見直す姿勢を示している。国会議員時代には朝鮮学校を高校無償化の対象外とするよう求める発言もしている。

     一連の言動は特定の政治信条を背景にしているのだろうか。小池氏は少なくとも朝鮮人虐殺についての認識を明らかにすべきである。

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