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今年3月にSYM三町会災害連合会が実施した防災訓練。トリアージの訓練もあった=同連合会提供

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今年3月に行った防災訓練の映像を見ながら、訓練結果を振り返るSYM三町会災害連合会のメンバー=東京都文京区で2017年8月20日、金森崇之撮影

 地区単位で住民や企業などが防災計画を作り、市区町村に提案する「地区防災計画制度」が全国で始まっている。自治体主導から脱却し、住民主体の防災対策が進むと期待されるが、まだ、その取り組みには温度差があり、普及には課題も残る。

 この制度は東日本大震災で多くの犠牲者が出たことをきっかけに、より実効性の高い防災計画作りを進めようと国が災害対策基本法を改正して、2014年4月に始めた。計画策定の範囲は自由で、複数の町内会でもマンション1棟でも構わない。計画内容も避難方法や要支援者対策など、住民が必要と考えた課題を対象にできる。

 ●まず課題を議論

 住民が提案すれば、市区町村は地域防災計画の中に盛り込むこともできる。住民が議論して決めた防災計画を正式に自治体の計画として位置づけることで、より地域の実情を反映した防災計画を作り上げることが制度の趣旨だ。

 今年3月、東京都文京区湯島であった防災訓練。災害対策本部の壁に地区内6カ所の中継映像が映し出され、無線で救助の指示が飛び交った。地元の東都文京病院の医師が救護の優先順を決めるトリアージを行い、次々と患者を搬送する。自治体が行う訓練と変わらない光景だが、実施したのは湯島2、3丁目の町内会でつくる「SYM三町会災害連合会」(高山宗久会長)や、地域の避難所運営協議会などの住民団体だ。

 連合会は07年に発足。毎年の訓練結果を基に地域防災マニュアルを策定し、災害時の避難方法や「SYM災害対策本部」の設置手順、地元事業所との連携方法などを定めた。文京区が把握し切れていない、要支援者の居場所を確認する取り組みも始めている。

 ●合意の難しさ

 15年度には内閣府のモデル地区に選ばれた。民間シンクタンク「防災都市計画研究所」の協力を得ながら、地区防災計画の策定を進めているが、まだ区に計画を提案するには至っていない。

 最大の課題は住民合意の難しさだ。計画の基となる完成済みのマニュアルは、3町会のみを対象としているが、湯島地区は連合会を含む16町会が2カ所の避難所に避難するため、災害時には他町会との連携が欠かせない。高山会長は「実効性のある計画を作るためには、16町会の協力を得て進めないといけない」と話す。

 連合会の呼びかけで、今年3月の訓練には3町会以外の残り13町会も参加するなど、取り組みは広がりつつある。しかし、各町会の防災意識には温度差もあり、地区防災計画の策定に積極的な町会だけではないのが実情だ。

 内閣府が定めたガイドラインでは、住民が自治体からのアドバイスを受けながら計画策定を進めることや、自治体側も住民からの提案を「積極的に受け止める」ことなどを求めている。しかし、自治体が住民の計画作りをどのような形で支援すべきか、明確な規定はない。

 文京区防災課は「区内では、災害時の避難方法が既に決まっている地区が多く、地区防災計画の必要性をどこまで感じるかは、それぞれ異なる。区としては8年計画で進めている避難所運営訓練が最優先だ。地区防災計画の合意形成は、住民に主たる役割を担ってもらわないといけない」と、難しさを説明する。

 内閣府は14年度からの3年間で、全国44カ所をモデル地区に指定し、計画作りを進めた。しかし、今年3月末現在、地区防災計画の素案を策定したのは23地区。そのうち、自治体の地域防災計画に盛り込まれたのは6地区にとどまる。

 内閣府は全国の自治体の地区防災計画策定状況の調査をする方針で、来年度の概算要求に「地域防災力の向上推進費」として調査費など5000万円を盛り込んだ。調査結果は都道府県別に公表し、取り組みが進んでいない地域への普及啓発の強化に乗り出す。

 ●自治体は後押し

 地区防災計画学会会長の室崎益輝・神戸大名誉教授は、従来、防災は行政主導のトップダウン型だったが、それでは巨大災害に対応できないと指摘する。

 さらに「地区防災計画の取り組みは、住民が災害を我がこととして捉え、地域の実情に合った実効性の高い計画を作ることにつながる。自治体は適切なアドバイスをしながら住民の計画策定を後押しすべきだ。まだ制度の理解が十分でなく、積極的に取り組めていない自治体もあり、国は周知に努める必要がある。専門家が計画作りをサポートする仕組みも作るべきだ」と語った。【金森崇之】

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