(青土社・3024円)
原題は「旬も考えずに、欲しい時に欲しいものを食べる今の暮らしをしていたら、食糧の供給は危なくなり、私たちの未来は危うい」だ。
今私たちは、一見豊かな食生活を楽しんでいる。太平洋戦争の末期から敗戦後の食糧難を知っている者には夢のようである。
けれどもこれは本当に夢なのか。私たちは賢い農業を行ない、賢い食べ方をしているかと本書は問う。機械化し、化学肥料、殺虫剤、除草剤を用いて資本を集中し、遺伝的に均質で多様性のない作物を大規模栽培する農業は危機にあると著者は言う。
このような警告は目新しいものではないが、本書の特徴は、バナナ、ジャガイモ、キャッサバ、カカオ、コムギ、ゴムノキという重要作物の危機を具体的に語り、とくに科学との関わりを歴史を踏まえて解説していることである。作物の種子の収集、野生の自然の必要性、作物と病原体や害虫との関係の研究、更には今私たち市民ができることなど多面的で総合的な視点が示されている。
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