連載

漆黒を照らす

大阪を拠点に国際報道に携わるフリージャーナリスト集団「アジアプレス」所属の石丸次郎さんと玉本英子さんの連載企画です。

連載一覧

漆黒を照らす

/45 命がけの脱出、シリア人一家 「自分が難民とは…」 /大阪

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 2015年9月、トルコの海岸に3歳の遺体が流れ着いた。ギリシャに渡ろうとしたボートが転覆、溺死したシリア難民だった。砂浜に打ち寄せられたアイランくんの写真は、世界中のメディアで大きく伝えられた。男児はコバニ出身。過激派組織「イスラム国」(IS)と地元クルド部隊との激しい戦闘が続いた町だ。

 同じ頃、コバニから逃れてきた、元アラブ系新聞社の記者で友人のフェルハッド・ヘンミさん(31)も、妻と幼い娘2人とともに、トルコから欧州へ向かおうとしていた。「ゴムボートで海を越える」。彼の電話を受けたのは、決行の数日前だった。危険すぎる、と私は言ったが、「ISがまた町を襲撃するかもしれない。転覆は怖いが、もう故郷には戻れない」と震える声で答えた。

 しばらく連絡が途絶えた数週間後に「無事だ」とのメッセージを受け取った。トルコで4000米ドル(約48万円・当時)を、脱出を手引きするブローカーに支払い、闇夜に難民30人とボートに乗った。波打つ中、ギリシャ領の島を目指して進んだ。彼は娘たちを腕に抱きながら「神様、どうか助けてください」と祈り続けたという。ギリシャに上陸すると、バスや電車、徒歩でおよそ10日間かけて数カ国を縦断、親戚のいるドイツにた…

この記事は有料記事です。

残り753文字(全文1273文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集