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武田 砂鉄・評『それでも それでも それでも』齋藤陽道・著

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答えへの道筋ではなく戸惑いの時間をくれる

◆『それでも それでも それでも』齋藤陽道・著(ナナロク社/税別1800円)

 雨がやんだ途端に蒸し暑さがぶり返した日、とても大きな虹がかかり、最寄り駅から家まで歩いて帰る間に、何人もの人がスマホで虹を撮影していた。友人同士で破顔しながら撮る人がいれば、わざわざ自転車を止め、柔らかな顔で撮る人がいれば、あたかも盗み撮りのように、ぶっきらぼうに撮る人もいる。虹よりも、さまざまな表情で虹を撮る人々に目を奪われてしまった。

 撮った写真に言葉を添えていくスタイルの本について、「『言葉を求めて写真を見る』のではなく、『写真からおのずと浮かぶ言葉を待つ』」ことを課したと著者。彼の耳に入る音は「重い感音性難聴なのでクリアなものではない」。しかし、写真を撮り、撮った写真に文を記すことによって、読者は音を感知する。そして、音だけでなくにおいも生まれ出てくる。五感のそれぞれに伝播(でんぱ)する体感が続く。

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