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SUNDAY LIBRARY

著者インタビュー 高石宏輔 『声をかける』

そこにあるものがフラットに感じられた時が“ハッピー”

◆『声をかける』高石宏輔・著(晶文社/税別1700円)

 ナンパ体験を書き綴(つづ)ったツイッターやブログで注目され、ナンパを通して学んだコミュニケーション術を伝える前著が、今も書店で平積みにされるカウンセラー・高石宏輔さん。本書にも自身のナンパ遍歴が反映されているが、今回は小説という表現手段を選んだ。

「前の本はノウハウ本で、読む人の情緒に訴えるものではなかった。今回は情緒に訴えたかったんです。そうすると物語を提示しないと成立しない。だから小説として書き始めました。でも、私小説を書いたという意識はありませんね」

 執筆中は大量の小説を読んだという。

「川端康成をかなり読みました。文体作りに、すごく参考になった。とてもシンプルなんです。でも、実際シンプルに書くのは難しい。文章を生み出すのも難しいけど、そこから削いでいくのがもっと難しい。“出しては削ぐ”作業のお手本が川端でした」

 生み出された文章は、情景も心理も極めて緻密に描写する。主人公は次々に女性に声をかけ、さまざまな形の関係を築くが、どこか乾いている。

「自分の場合、文章は機能性が大切なんです。読んだ人にどう機能するか、どう反応されるかを、いちばん気にしながら書きました。カウンセリングを学んだせいかもしれませんね」

 裏腹にセックスシーンはじっとりと濃密で、一級の官能小説となっている。

「興奮しながら書いてましたからね。喫茶店で、わずか数ページを3~4時間かけて書いては削って。ある時、原稿からふと目を上げたら、とても奇妙そうにジーッと僕を見ている女性と目が合ったんです。ものすごく没入しちゃうんですね。自分でもちょっとアブナイと思いました(笑)」

 性描写には、高校時代から読んでいたサド作品や『カザノヴァ回想録』、ジョルジュ・バタイユの『青空』などの影響を感じるという。

「川端康成の『みずうみ』や『眠れる美女』の官能性も好きですね。でも性描写は飽きられやすい。だから物語に組み込まれた、リアルなセックスシーンのありようを考えました」

 主人公がナンパした女性を伴う飲食店の場面も、それぞれに印象的だ。

「食事の店選びは、ナンパの方法論としても重要です。雰囲気作りだけじゃなくて、“食”って一種のドラッグですから。それを食べた相手がどう反応するかを見る、っていうところもありますね」

 こうして何人もの女性を渡り歩いた主人公は、どこに行き着いて何を見つけたのだろう?

「ハッピーエンドかどうか……。それは何をもって“ハッピー”とするかによって変わりますよね。主人公は『幸せとは、体験への無批判な没入』ではと疑う。それは僕自身とも重なりますが、僕がハッピーだと感じるのは、何かを得た時ではない。そこにあるものが、ただそこにあると、フラットに感じられた瞬間なんです。それを逆に主人公と重ねると、彼は最後の状況をどう把握しているんでしょうね(笑)」

(構成・小出和明)

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高石宏輔(たかいし・ひろすけ)

 1980年、兵庫県生まれ。カウンセラー・作家。慶應義塾大在学中にカウンセリングを学ぶ。同時に風俗のスカウトマン、ナンパ講師としても活動。著書に『あなたは、なぜ、つながれないのか』など

<サンデー毎日 2017年9月17日号より>

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